これまで読んできた1200冊を全て記録している僕が、本当にオススメする「写真家が書いた本」

朝日新聞が識者120名からアンケートを実施し、平成の30冊を選定した。
https://book.asahi.com/article/12182809

私は2005年から読んだ本を記録し始めて、今まで続けてきた。
きっと生涯この習慣は続くだろう。
1200冊を超えた今、本当にオススメする本を紹介していこうと思う。

オススメの本といっても、ジャンルは多岐にわたる。
「僕が選んだ本」という視点を盛り込みたいので、僕ならではのジャンルのオススメ本を紹介しようと思う

例えば、写真家が書いた本。
自分の半生を描いた本、サッカーにまつわる本、丁寧な取材から描かれた本、自分の日常を言語化した本、信頼できる小説家。

1200冊も読んでいれば、おのずと好みがわかってくる。
それらをジャンルを分けし、僕ならではの視点で選書をしていきたい。

今回は、そのシリーズ第1弾「写真家が文章を書いた本」だ。

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写真家が文章を書いた本の魅力

「写真家とは、見る仕事だ」と言った方がいた。

そこにぼんやりと存在する物事や心象を深く見ることで、その対象物を撮影する。
ぼんやりと見ているだけでは流れていってしまう瞬間を見留めることから写真家の活動はスタートする。
そんな話をしてくれた。

写真家の書く文章はとても心に響く作品が多い。
それは、写真家の特性である「物事を見る力」が備わっているからだと思う。

よく見ることで、よく考えるようになる。
同じ風景を共有していても、より鮮明な解像度で見ることで、心象をより深く感じることができるというわけだ。

写真家が書いた文章を、ぜひ読んでみてほしい。

本当にオススメする写真家が書いた本6作品

1.
ライド・ライド・ライド/藤代冥砂

ライド・ライド・ライド

写真家の藤代冥砂さんは、まだ何者でもなかった若かりし頃に、世界中を旅した。
飛行機に乗り、バスに乗り、女に乗る。
愛する人と出会い、愛した人と別れ、また愛する人と出会った。

美しい景色の話など、なにひとつ書かれていない。
いろいろな人と出会い、心の浮き沈みを体験し、移動することこそが彼にとっての旅なのだ。

「もう、家に帰ろう」では優しさに包まれた達観したような文章を書いた藤代さん。

そんな藤代さんからはあまり想像できないちょっぴりセンチメンタルな描写も、若さと捉えればこの時期にしか書くことが出来ない特別な文章なのだと納得できる。

もしかすると、僕が世界で一番好きな本はこの本かもしれない。

ペギーと会うことは二度とないだろう。ユージンと会うこともないだろう。これから、二・三十年生きたとしてももう会えない人たちなのだ。
ペギーと交わしたキスは最後のキスだ。
たぶん生まれ変わったら忘れてしまう。だけど、生きているうちは、ずっと覚えているだろう。自分の娘が誰だかわからなくなるほどボケてしまったあとでも、きっと忘れないことがある。誰にでもそんな十日間があるはずだ。
あの、サイゴンでの十日間がなかったら、私の旅はもっと早くに終わってしまったかもしれない。つまり、生きることの意味の半分を失うことになっていただろう。そうだったとしたら、意味が半分しかない人生はどんなふうにすぎていったのだろう。
静脈を震わす青さに満ちた明け方の五分を知っていたとしても、ギターアンプから初めて音を出した時の喜びを知っていたとしても、それはとるに足りないことだ。どうでもいいことだ。
空港に向かう車の中での思いが好きだ。どんなに失っても、また何かが勝手に始まっていく。そんな、どうしようもなさが好きだった。

 

2.
全ての装備を知恵に置き換えること/石川直樹

全ての装備を知恵に置き換えること (集英社文庫)

僕は写真家の石川直樹さんがとても好きなのだが、その石川さんを好きになったきっかけは、この本からだった。
地図やコンパスなどを持たずに夜空に浮かぶ星と地形だけで航海を行うミクロネシアの旅、高校2年生のときに一人で訪れたインドへの旅、北極から南極までを自転車やカヤックなどの人力で移動したPOLE TO POLEの旅、文化も言葉も同じ土地が、国境という線を越えるだけで分断されることを実感させてくれる。

現在もなお旅を続けている石川直樹さん。
その旅は、垂直方向は8000メートルを超える山々であり、水平方向では北極や南極も都市も全てが旅の対象として活動している。

石川さんがまだ20代の頃に訪れた旅について、そして彼が旅を通して感じた世界との繋がりについて書かれているこの本は、写真家が写真では表現しきれない部分を愚直で真っ直ぐな言葉で鮮やかに描いてくれている。

僕は人が毎日を過ごしていく中で、ある出来事からふと感じる意識や気づきの部分をおもしろいと感じる。
この本には、そんな体験がつまっている。
旅を通して人が学んでいくことについて考えさせられる一冊。

美しいものを懐かしいと思うのは、太古の記憶と自分自身がどこかでつながっているからだろうか。

 

3.
旅をする木/星野道夫

旅をする木 (文春文庫)

アラスカを愛し、アラスカに愛された写真家・星野道夫さんの代表作が「旅をする木」だ。

アラスカの絶対的な自然
太古の昔から変わることがないカリブーの大移動
人々が語り継いできた神話の世界
芯に刺さる言葉を持ったブッシュパイロット達
クジラやシロクマたちの不思議な行動
短い夏や長い冬の間に彩る春や秋の美しさと季節の移り変わり。

それらを温かく優しい言葉で、星野道夫が紡いでくれている。

この本以前とこの本以後で、なにかが変わった。
もしかすると、大袈裟ではなく、そういった人は多いのかもしれない。

ある人は仕事を辞めたかもしれないし、
ある人は日常の尊さに気がついたかもしれない。
ある人は旅立ったのかもしれないし、
ある人は日々の些細な変化に目を向けるようになったのかもしれない。

僕にとって旅をする木は、この世界を旅しようと思ったキッカケになった一冊である。

一年に一度、名残惜しく過ぎてゆくものに、この世で何度めぐり合えるのか。
その回数を数えるほど、人の一生の短さを知ることはないのかもしれません。
アラスカの秋は、自分にとって、そんな季節です。

時が過ぎていく儚さをここまで完璧に表現する文章を、僕は他に知らない。
この文章に出会えただけで、この本に出会えてよかったと思える。

星野道夫の旅をする木に、栞はいらない。どこから読んでもいいし、読まなくてもいい。
いつ止めてもいいし、何度読んだっていい。

星野道夫は、いつだって大切なことを伝えてくれる。
そして、大切なことは何度でも、伝えてくれる。
あなたが読みたいときに、読みたいページから読むことをオススメする。

 

4.
旅情熱帯夜/竹沢うるま

旅情熱帯夜 1021日・103カ国を巡る旅の記憶

竹沢さんの書く文章や、些細な光を写し出す写真は、多くの人が何気なく見過ごしてしまう日常の出来事に、彼が気づき、足を止め、切り取っているからなのだと気づかせてくれる。

本を読むだけで、旅を通して自分との対話を特に深くしているのがわかる。

旅を追体験できるような、そんな一冊。

何となく、この子に自分のこれまでの旅の話を伝えたくなった。
列車をいくつも乗り継ぐと、その先に自分の知らない世界があり、またさらにバスを乗り継ぐと、どこまでも行くことができる。
山を越え、海を渡り、砂漠を歩き、川を下る。
そこには見知らぬ人々が住んでいて、聞き慣れない言葉を話し、不思議な伝統とともに生きている。
そこに知らなかった価値観があり、幸せがあり、また危険がある。
それをひとつひとつ経験して、一歩ずつ進む。
そんな冒険譚を、話したくなった。

 

5.
父の感触/小林紀晴


父の感触

アジアンジャパニーズで有名な小林紀晴さんは、「写真学生」という自伝的小説も書いていて、文章を得意とする写真家である。

乾いた文体で淡々と進んでいく描写の中で、ふと心が揺さぶられる感覚を感じる。
モラトリアム期のなにものかになりたいけれど、どうしようもない悶々とした感情を表現することが本当に上手だ。

「父の感触」は、二つの場面が行き来して進んでいく。
ニューヨークでテロが起きた9.11の瞬間にニューヨークにいた筆者の喪失と、父の死にともなう筆者の喪失の二つだ。

二つの喪失を通して筆者が語ること。
小林さんの文章は、心の隙間にひどく響く。

心配するより、される立場にあることは間違いない。
なのにYさんはそのことに気がついていないかのように、お母さんのことをしきりに心配している。
人は人を想い、人を案ずる。

 

6.
そして、僕は旅に出た/大竹英洋


そして、ぼくは旅に出た。: はじまりの森 ノースウッズ

だれもが、何者でもなかった頃。
一人の偉大な写真家は、写真家に憧れるただの旅人だった。

導かれるようにノースウッズの森にたどり着き、人々と出会い、写真を撮る楽しさを感じていった著者。
大きな流れに乗ることで、偶然が必然であるかのような不思議な出会いがやってくる。
そんなことを感じさせる一冊。

大切なことは、なにを見ようとしているか、その心なんだよ。こうして並べると、きみがなにを見つけようとしていたかがわかる。花や動物ばかりに目がいきがちだけどね。水滴や雲、森のシルエット、さまざまな色にも反応している。
わたしは、そんなきみの視線がとても好きだ。

藤代冥砂、石川直樹、星野道夫、竹沢うるま、小林紀晴、大竹英洋

写真家が書いた文章は、感情を揺さぶられる作品が多い。

それは、写真家が普段では見過ごしてしまうような決定的瞬間に目を留め、写真に撮る作業をしているからだと思う。
写真に撮っていた作業を、作業を文章に起こすだけ。

大切なことは、そのことに気づくことだと思う。
その表現方法がカメラなのか、文字なのかの違いなのだから。

写真家の文章作品。
ぜひ読んでみてください。

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