旅について考えてみた。旅に物理的な距離は必要なのか?

旅に物理的な距離は必要なのか?

以前、トークイベントで「旅の定義」について話しになったことがあった。

「物理的な距離がないと旅とは言えないのか?」
「近所の居酒屋へ行き、新しいことに出会うことは、旅とは言えないのか」
「修行中の寿司職人が、包丁を研ぎながら自己を見つめている。それは、精神的な旅をしているとはいえないのか」

そんな話になった。

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旅のエッセイ:始まりは、いつも外の世界を知ろうとすることからだった
旅のエッセイ①:旅する本に出会った奇跡的な出会いの話
旅のエッセイ②:生まれて初めて映画館で映画を見た記憶
旅のエッセイ③:人と人が繋がる場所は世界中にあったという話
旅のエッセイ④:僕が旅に出る理由
旅のエッセイ⑤:世界一周を終えて3年間旅をしなかった理由と、3年後に旅をして感じたこと
旅のエッセイ⑥:旅について考えてみた。旅に物理的な距離は必要なのか?
旅のエッセイ⑦:「また会おう」と握手した。「元気でいてね」とハグをした。
旅のエッセイ⑧:台湾と聞いて連想する「ツボとハナと夢」
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旅から学びや気づきをもらえる機会は多い。
旅する本に出会った奇跡的な出会いの話」では、出会ったことで想像することができるということを書いた。

旅する本に出会った奇跡的な出会いの話

個人的には、近所の居酒屋に行って新しいことに出会うことは旅と言っていいように思う。自己を見つめる旅も、まあ広義で考えれば旅と言っていいだろう。
「それはちょっと違うよ」という意見があることも理解できるが、僕の個人的な感覚としてはそんな感じ。

物理的な距離が伴わなくても、そこにチャレンジや気づきが備わっていれば旅をしているように感じてしまう。

それには友人が体験したこんな話が背景にあるからだ。

6年間店の前を通っていて、初めて入った赤提灯のお店

とある街に住んで6年が経った女性がいた。

最寄り駅から自宅までの道に、寂れた赤提灯がぶら下がった1軒の大衆居酒屋があり、ずっと気になっていた。

外からうっすらと見える店内は、カウンター席しかなく、ママが1人で切り盛りしている昔ながらの小さな居酒屋という雰囲気で、若くて美しいその友人が気軽に1人で入るには少々気がひけるようなお店だった。

ただ、その日はなんだか心が疲れていた。

新しい職場への異動があり、慣れない人間関係にモヤモヤした帰り道。
なにかに導かれるように、6年間気になりながらも立ち入ることのなかった赤提灯のお店に足を踏み入れていた。

カウンター越しに目があったママは、若くてきれいな女性が1人で入ってきたことに一瞬驚いた様子を見せたが、「いらっしゃい」と声をかけた。

店内には常連らしい男性が1人いて、ママと楽しげに話をしていた。
長い時間この店に通っている雰囲気を感じる。

友人と常連客の目が合うと「おう、こんな若い子が1人で来るなんて珍しいね」と声をかけられた。

「初めてなんです」
友人は少し離れた席に座り、おしぼりで手を拭きながら常連客に目を向けた。

「なに飲みます?ビール?」
カウンター越しにママは注文を尋ねた。

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彼女はビールを飲みながら小皿をつまんだ。
温かい家庭料理が優しい味で、体に染みる。

ママを口説こうと必死なおじいさん。
くたびれたサラリーマン。
恋人募集中だというおじさん。

次々とやってくる個性豊かな常連客に声をかけられ続けるうちに、なんだか自分が初めてここを訪れたことが信じられないような不思議な感覚をもつようになっていった。

ママは彼女が初めてきた記念だと早々に店を閉めて、そのまま近くのスナックへ一緒に行くことを彼女に提案した。

普段の彼女なら間違いなく断りそうなその提案を、どういうわけか受け入れ、生まれて初めてスナックに行った。
初めて会った、個性豊かな面々と。

※※※

12時をまわった帰り道。

肌寒くて澄んだ空気の夜道を歩いていると、店に入る前に感じていたモヤモヤが不思議と晴れているような感覚を覚えていた。

新しい場所での一期一会の出会い。

来た時よりもほんの少しだけ気持ちが軽くなって帰ることができる場所。

彼女は、まるで旅をしたときのように、夜空を見上げながら歩いていた。

日常から非日常へと変化する瞬間

僕はこの話を聞いたときがちょうど第1回のタビノコトバを企画していたときで、まさにこんな話が応募されるとこの企画は面白くなるなと思っていたところだった。

友人がこの話を書くことはなかったが、僕にとってはとても印象深く、旅ってこういうことも含めるよなと確信をもったキッカケにもなった。

 

旅に物理的な距離は必ずしも必要なわけではない。
そんなことを考えていたときに巡り会った話。

彼女が一歩を踏み出した瞬間。
その刹那、彼女の日常は非日常へと変化したのだ。

旅に必要な要素

僕はこの経験から、旅を定義付けするのならば、「自分の範囲から一歩を踏み出すこと」と、考えるようになった。

自分の日常空間から非日常空間へと踏み出した瞬間に、その行為は旅になる。

旅をするように生きるとはまさにそういうことで、ずっとどこかに移動し続けるというよりも、ずっとなにかに挑戦し続けることがしっくりとくる。

始まりは、いつも外の世界を知ろうとすることからだった」という記事でも書いたが、外の世界を見ることで、中の世界を探すことができる
僕にとっては、それがとても楽しい。

始まりは、いつも外の世界を知ろうとすることからだった

友人の体験を聞き、様々な刺激を受け入れて一歩を踏み出すような生活をしていきたいと強く思った。

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