服部文祥|「息子と狩猟に 」を読んで考えた

書評記事を書くことを続けてみる

このブログの読者から「たくさん本を読んでいるのでオススメの本を教えてほしい」と伝えられたことがある。

いろいろ考えた結果、読み終わった後の記憶が新しい状況の中で、記事を1本書くことを続けてみることにした。

決意してから19冊目は、服部文祥さん著書「息子と狩猟に (新潮文庫)」について書いてみる。

服部文祥|息子と狩猟に

息子と狩猟に|服部文祥


息子と狩猟に (新潮文庫)

服部文祥とは?
サバイバル登山家の異名をもつ異彩な登山家。「山に対してフェアでありたい」という考えから、食料を現地調達し、装備を極力廃した「サバイバル登山」のスタイルで活動をしている。情熱大陸での有名な滑落シーンや、amazon primeのカリギュラで東野幸治さんと狩猟を共にした姿などメディアにも多数出演している。著書の「ツンドラ・サバイバル」が最高におもしろい。

サバイバル登山家の服部文祥さんの初の小説作品。内容も服部さんらしく、根源的な問いを与えてくれるものだった。

この小説には2編の短編が描かれている。一つは「狩猟」、もうひとつは「高所登山」がテーマである。
どちらも服部さんのこれまで培ってきた経験が活かされたテーマではあるが、もちろん「サバイバル登山家」なんて名乗る人の書く小説が、そんな単純な作品なはずがない。

私たちが暮らす人間界と、山がそこにある自然界。
人間界にあるタブーやモラルは、自然界ではタブーやモラルとして存在するのか?

それぞれの世界でのタブーとモラルの境界線を考えさせられる、一癖も二癖もある作品。
ぜひ読んでほしい。

「息子と狩猟に」に書かれていた言葉を紹介する

僕は本を読んだら気になった文章をノートに書き記す習慣を、もう15年近く続けている。

15年前から私が本を読んだら必ず行っている2つの習慣

インプットの吸収率が圧倒的に上がるし、なにより目に見える形で記録されていくことが自分の自信になる。

本書から気になった文章を紹介する。

 

秘密は自分の口からバレる。しゃべらなければ絶対にわからない

その通り。
誰にも知られたくない話があるのなら、自分の口からは絶対に話さないことだ。

 

人殺しは一番重い罪だ。すくなくとも世の中ではそうなっている

 

至極当たり前であるが、「すくなくとも」という箇所がこの本の奥深さを物語っているのは間違いない。

「息子と狩猟に」を読んで思ったこと

この本には二つの短編が記されている。
内容についての詳しい話は書かないが、どちらの作品も人間界の「タブーやモラル」について描かれている。

片方は狩猟の世界、もう片方は高所登山の世界
どちらも自然界に足を踏み込んだ世界ではあるが、それぞれが人間界の作ったタブーやモラルが形成された異様な世界だ。

鉄砲を使う狩猟には厳しいルールがあり、その人間界のルールを守らなければ罰せられる。
生きるか死ぬかの瀬戸際にある高所登山にも、やってはいけないモラルがある。

 

だが、それをちょっと俯瞰して見た自然界における「狩猟」や「高所」ではどうだろう?

夜中に鹿を撃つこと(捉えること)はいけないことなのか?
サバンナでライオンがインパラを捉えて食べることはいけないことなのか?
仲間を見捨てて自分だけが生きようとすることはいけないことなのか?
チーターに狙いを定められたシマウマを見捨てて自分だけが逃げることはいけないことなのか?

「狩猟できる山」や「8000mの高所」を舞台にした人間界と自然界の境界線にある世界のルールについて考えさせられる一冊。
超絶おすすめ。

この本の評価
面白さ
(4.5)
吸収できた言葉
(4.0)
デザインの美しさ
(4.0)
総合評価
(4.5)

服部文祥さんの他のオススメ作品「ツンドラ・サバイバル」

ちなみに服部文祥さんのツンドラ・サバイバルはこのブログの一番人気の記事「心からオススメできる面白い「旅の本・紀行文20冊」でも紹介している本で、こちらの作品も強くオススメする。

ツンドラ・サバイバル/服部 文祥


ツンドラ・サバイバル

サバイバル登山家、服部文祥のベスト本
服部さんが、下記の引用文章を書いた。これが感動的で、震えた。

言葉は通じなくても、私にとってミーシャは気心が通じ合う猟仲間であり、ミーシャの存在は私の理想だった。理想の人間に出会い、理解し合えたことは、これまでの自分の生き方が間違いでなかったと確認することでもあった。
狩猟の経験がなければ私は性格にミーシャを理解できたとは思えないし、正しく評価できたとも思えない。
さらにミーシャはミーシャのような狩人が世界中にいるという証拠でもあった。それはそのまま過去にも未来にも、私にとって信用できる狩猟仲間、山仲間が存在するという証拠だとも考えることができるはずだ。

彼は横浜の自宅で動物を捌いたり鶏を飼ったりして暮らしている。
恐らく奇異の目で見られることも今まで多くあっただろうが、彼が毎日を積み重ねて実践してたことを、ツンドラの大地で当たり前のように実践している人に出会った瞬間。

この喜びは、きっと僕にはわかりえない感情だろう。

自分が積み重ねてきことが間違いではなかったし、自分が積み重ねてきたからこそ彼の行動を理解できたし、自分が積み重ねてきたように今も昔も狩猟している人がいるという安心感。

そんな途方も無い感覚を想像させてくれる一冊。

心からオススメできる面白い「旅の本・紀行文20冊」

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