石川直樹|「この星の光の地図を写す 」を読んで考えた

書評記事を書くことを続けてみる

このブログの読者から「たくさん本を読んでいるのでオススメの本を教えてほしい」と伝えられたことがある。

いろいろ考えた結果、読み終わった後の記憶が新しい状況の中で、記事を1本書くことを続けてみることにした。

決意してからの5冊目は写真家・石川直樹|「この星の光の地図を写す」について書いてみる。

この星の光の地図を写す|石川直樹

この星の光の地図を写す|石川直樹


この星の光の地図を写す <北極カバー>

石川直樹とは?
写真家。人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表し続けている。北極、南極、ヒマラヤ8000mといった極地、ニュージーランドの原生林、ポリネシア地域に浮かぶ島々、大分県の国東半島など、フィールドは様々。写真は土門拳賞、文章は開高健ノンフィクション賞を受賞している。
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写真集「この星の光の地図を写す」の著者・石川直樹さんは、僕が一番影響を受けた写真家。

僕が写真展をやろうと思った最初の最初のきっかけは、石川さんのワークショップに行って写真のセレクトの視点を学び、東松泰子さんのワークショップに行って写真の現像の方法を学び、あとはよい写真さえ撮ることができれば発表できると思ったから。

写真を撮らなくなっていた僕が、再び写真を撮り始めた理由

僕の写真活動は、飄々と写真論を語る石川さんに大きな影響を受けたことは間違いない。

そんな石川さんのこれまでの作品のオムニバス的な作品である「この星の光の地図を写す」は、石川直樹を知るうえでオススメの一冊である。

「この星の光の地図を写す」に書かれていた言葉を紹介する

僕は本を読んだら気になった文章をノートに書き記す習慣を、もう15年近く続けている。

15年前から私が本を読んだら必ず行っている2つの習慣

インプットの吸収率が圧倒的に上がるし、なにより目に見える形で記録されていくことが自分の自信になる。

本書から気になった文章を紹介する。

家の玄関を出て見上げた先にある曇った空こそがすべての空であり、家から駅に向かう途中に感じるかすかな風の中に、もしかしたら世界のすべてが、そして未知の世界に至る通路が、かくされているのかもしれません。

 

人は生きている間にいろいろなことを忘れてしまう。あれほど鮮烈な光景も、あんなに強烈な体験も、あんなに嬉しかったことも苦しかったことも、いつしか少しずつ薄れ、あるいは断片的になっていく。
そうした自分のさまざまな経験を繋ぎ止めてくれているのが、ぼくにとっては写真である。この二年間、あちこちの美術館で設営に立ち会いながら折に触れて自分の写真を見直し、そこから引き出され、引き寄せられる記憶があって、それは過去を振り返るというよりはむしろこれからの道筋を示してくれる文字通り「光の地図」として、ぼくの前に立ち現れた。

 

二つ目の言葉が石川さんのこれまでの旅や人生の背景を想像したときに、途方もなく突き刺さる。

写真展をすると、誰よりも自分の写真を見続けることになる。
その作業は過去を振り返り、今を考え、未来の道を示してくれる。

石川さんにとってはそれが写真なだけで、きっとそれは人それぞれの生き方によって異なる。ある人は包丁だろうし、ある人はメガネかもしれない。

立ち止まって見つめると記憶を引き出されるような、そんなものがあると人生は豊かになるのかもしれない。

「この星の光の地図を写す」を読んで思ったこと

ヒマラヤの8000mの山々の写真も、北極や南極も、ポリネシア地域に浮かぶ島々も、洞窟壁画も、全てが石川直樹の歩いてきた道であり、見たことのない圧倒的な景色でありながら不思議とここからの距離を強く感じることはない。

それはきっと、望遠レンズのない同じカメラで撮ることで石川さんの視点が固定されているというのも一つの要因だろう。
対象との距離感が同じだから、とても見やすい。

今までの写真集のベストアルバムのような、多くの写真集から少しずつ写真をピックアップした一冊。

この本の評価
面白さ
(4.0)
吸収できた言葉
(4.0)
デザインの美しさ
(4.5)
総合評価
(4.0)

その他の石川直樹さんの写真集を紹介する

個人的には写真集にはストーリーがあったほうが楽しめるので、他にももっと好みの写真集はある。
また、文章もとても秀でているので、こちらも読んでみると面白いと思う。

【写真集】

【文章】

全ての装備を知恵に置き換えること/石川直樹

全ての装備を知恵に置き換えること (集英社文庫)

写真家・石川直樹さんがとても好きなのだが、その石川さんを好きになったきっかけは、この本からだった。
地図やコンパスなどを持たずに夜空に浮かぶ星と地形だけで航海を行うミクロネシアの旅、高校2年生のときに一人で訪れたインドへの旅、北極から南極までを自転車やカヤックなどの人力で移動したPOLE TO POLEの旅、文化も言葉も同じ土地が、国境という線を越えるだけで分断されることを実感させてくれる。

石川さんがまだ20代の頃に訪れた旅について、そして彼が旅を通して感じた世界との繋がりについて書かれているこの本は、写真家が写真では表現しきれない部分を愚直で真っ直ぐな言葉で鮮やかに描いてくれている。

美しいものを懐かしいと思うのは、太古の記憶と自分自身がどこかでつながっているからだろうか。

極北へ 石川直樹


極北へ

写真家・石川直樹の極地の旅にまつわるエッセイ。

全ての装備を知恵に置き換えること」が今までの様々な旅について感じたことを綴っていたのに対し、今作は極北に特化した文章なのもおもしろい。
極北の世界を体感しに行きたくなる。

動物と人間が同じ目線をもち、お互い畏怖の念をもって向き合える大地は、今や希有な存在である。
「はるか昔、人間と動物が同じ言葉を話していた」という先住民の神話はおとぎ話ではなく、畏れるべき存在をもっていた本来の人間の思考から生まれたものだったのだ。眠っていた野生を呼び覚まし、今見ている世界が世界のすべてではないということを思い出すためには自分と切り離されたものとして風景を眺めるのではなく、自分と繋がる環境として地球を感じなくてはならない。

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