【読書感想文】高橋源一郎さん著作『ぼくらの文章教室 』

この記事では、朝日新聞出版から出版されている「高橋源一郎さんの著書『ぼくらの文章教室』の書評記事」です。僕が好きなシリーズ本「17歳の特別教室」を書いた方です。

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高橋源一郎さん著作「ぼくらの文章教室」は、どんな本?

ぼくらの文章教室|高橋源一郎


ぼくらの文章教室

高橋源一郎とは?
小説家。このブログでも書評記事を書いた哲学人生問答などの「17歳の特別教室」シリーズの発起人。

17歳の特別教室シリーズで高橋源一郎さんの著書「答えより問いを探して 17歳の特別教室」が面白かったので、同じ著者の二冊目を読んだ。

「17歳の特別教室」に関しては、哲学者の岸見一郎さんの「哲学人生問答」の書評記事を書きましたので、興味のある方は読んでみてください。

読んでみて面白かった作家の本は、必ず他の著書も読んでみることにしていて、今回は高橋源一郎さんの言葉を求めて二冊目を読んだ。

「ぼくらの文章教室」に書かれた高橋源一郎さんの名言・名文

僕は本を読んだら気になった文章をノートに書き記す習慣を、もう15年近く続けている。

インプットの吸収率が圧倒的に上がるし、なにより目に見える形で記録されていくことが自分の自信になる。

この本は文章として記録しておこうと思ったものはなかったが、気になった内容を紹介したい。

Kさんは壮大な旅をした。書くこともたくさんあったはずだ。でも、Kさんは、そうはしなかった。旅のあれこれや、面白かったこと、恐ろしかったこと、びっくりするようなこと、それらを書き連ねて、その文章を読む人を、びっくりさせたり、感心させたりしようとはしなかった。それでは、「お金持ち」の「自慢」にしかならないからだ。
だから、Kさんは、実際には、あの「文章」で1つの事しか書かなかった。それは、1冊の本のことだ。それ以外の事は、みんな、捨ててしまったのである。

高橋さんが文章教室に招かれて、参加者の方が書いてきた文章を読んで話した内容。
Kさんというのはその参加者の方で、1年ほどの長い旅をした経験のある人。

Kさんは、金子光晴の「眠れ巴里」と言う本に、偶然出会った。Kさんが旅するように、その本も旅をしている。偶然が重なって、Kさんは、その現場に立ち会う。
Kさんはなぜ、1年にわたって旅をしたのかは、その「文章」には書かれていない。だから、僕たちは、想像するしかない。こちらから近づくしかない。そして、Kさんの「文章」を読んでいると、僕たちは、近づきたくなる。僕たちが近づきたくなるのは、その「文章」が謙虚だからだ。少し、うつむき加減で、小さい声で喋っているからだ。何をしゃべっているのだろう。僕たちは、そう思って、もっとよく聞こえるように、と近づく。
僕は、そういう「文章」を、僕たちが、黙って近づきたくなる「文章」を、いい文章だと思う。

生きると言う事は、「初めて」の経験の積み重ねによって、成り立っているのである。けれど、いつの間にか、僕たちの前から、「初めて」は消えてゆく。学習や労働は、勤勉な「繰り返し」になり、社会の中に入り込むほど、どんな「初めて」も断片的になり、ついには、「初めて」のものにぶつかっても、何も感じなくなるのである。
優れた文章は、長い時間と経験の果てに生まれる。けれど、同時に、そこには、繰り返しから来る退屈さは存在しない。逆に、あるはずのない「初めて」の感覚さえあるように、僕には思える。

この本を読んでとにかくびっくりしたことは、僕が長い旅をしたことについてに話すアジェンダに「旅する本の話」があるのだが、それと同じような経験をし、文章にまとめた人がいるということだ。

僕はこの話をトークイベントや文章にまとめるなど今まで幾度もしてきて、それこそ旅の経験を語るときに真っ先に話すことでもあるのだけれど、その経験からなにを感じたかと考えたときにKさんや著者の高橋源一郎さんのまとめとよく似ていた。

自分がその体験のなにが特別だと思い、なにを学び、なにを考えたのか。
それを第三者的な意見として伝えられたような気がしてとてもおもしろかった。

高橋源一郎さんの言葉は、2020年に読んだ本から心の響いた名言・名文を紹介した記事で挙げているので、よかったら読んでみてください。

高橋源一郎「ぼくらの文章教室」を読んだ読書感想文 まとめ

この本を読んだからといって文章がうまくなることはきっとないだろう。
文章の書き方を解説しているような本ではなく、高橋先生が考える「よい文章」を読んで、それについて感じたことが書かれている。

ちょっと難しい話もあるかもしれないけれど、前述したKさんの話の部分はとても興味深く、わかりやすく、面白いと思う。

「文章」を読んでいると、僕たちは、近づきたくなる。僕たちが近づきたくなるのは、その「文章」が謙虚だからだ。少し、うつむき加減で、小さい声で喋っているからだ。何をしゃべっているのだろう。僕たちは、そう思って、もっとよく聞こえるように、と近づく。
僕は、そういう「文章」を、僕たちが、黙って近づきたくなる「文章」を、いい文章だと思う。

まさにその通り。
黙って近づきたくなるような文章を書いていきたい。

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この本の評価
面白さ
(3.5)
吸収できた言葉
(4.5)
デザインの美しさ
(3.0)
総合評価
(3.5)
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