【新生活を過ごすあなたへ】高校を卒業し、実家を出て一人暮らしを始めた日のこと

コロナウイルスで大変なことになっているけれど、この4月から新生活を始めた人も多いと思う。
その中には、実家を出てひとり暮らしを始めた方もいるだろう。

地方で育ち、高校卒業と同時に育った町を離れて進学する人もいるかもしれない。
10数年前の僕がそうだった。

こんな時期で不安なことも多いかもしれないが、この春から過ごすあなたの新生活の心に、少しでもリンクすれば嬉しく思う。

今でも覚えている、生まれ育った町を離れた日の思い出を書いてみる。

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旅のエッセイ:始まりは、いつも外の世界を知ろうとすることからだった
旅のエッセイ①:旅する本に出会った奇跡的な出会いの話
旅のエッセイ②:生まれて初めて映画館で映画を見た記憶
旅のエッセイ③:人と人が繋がる場所は世界中にあったという話
旅のエッセイ④:僕が旅に出る理由
旅のエッセイ⑤:世界一周を終えて3年間旅をしなかった理由と、3年後に旅をして感じたこと
旅のエッセイ⑥:旅について考えてみた。旅に物理的な距離は必要なのか?
旅のエッセイ⑦:「また会おう」と握手した。「元気でいてね」とハグをした。
旅のエッセイ⑧:台湾と聞いて連想する「ツボとハナと夢」
旅のエッセイ⑨:一家の命運を賭けた家族旅行の思い出について語ろう
旅のエッセイ⑩:初めて働いた職場で出会った絵描き
旅のエッセイ⑪:ネパールのチトワンからポカラへ移動しているバスで出会ったおまじないの話
旅のエッセイ⑫:マサイ族の男性から教えてもらった世界の真実についての話

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高校を卒業して地元を離れることになった

大学受験で希望通りいかなかった僕は、数ヶ月前まで想像もしていなかった愛知県に住むことになった。
まさか自分が愛知に住むようになるなんて、思ってもみなかった。

皿やコップなどの細々した荷物は段ボール1箱に詰めて事前に郵送し、ベッドや炊飯器などの家具家電はアパートを決めに行ったときに全て購入して愛知に住む日の午後便で届くようになっていた。

あとは当日に手荷物だけを鞄につめて数時間特急電車に乗り、名古屋で地下鉄に乗り換えて家まで一人たどり着くだけ。

 

春休み中は暇さえあれば自転車ですぐの距離にいる友人たちと会い、なにをするわけでもなくダラダラと話をしていた。

今のように集まっているのにスマホ画面を見続けるなんてこともなく、今ではもうなにを話していたのかも思い出せないけれど、とにかく長い時間を一緒に共有していた。
それが、ただただ楽しかった。

楽しい時間と、希望通りにならなかった進路。
一人暮らしを始めることへの期待はあったが、地元を離れることへの寂しさのほうが断然強かった。

生まれ育った町を離れた日

偶然にも地元を離れる日が同じだった友人が二人いた。
今日が最後だと前日夜から朝までカラオケをし、その余韻に浸りながら朝靄が町を包む静かな時間に帰宅した。

午後便の荷物を受け取るため朝8時頃の特急電車に乗ることになっており、家に帰って最後の荷物整理をして二階にある自室を離れ、階段を降りて家族のいるリビングへ向かった。

まるでフラっと遊びに行くように家を出ようとしていた僕は、挨拶だけはしようと父親のもとへ行き、声をかけた。
父親は気まずそうに「おいっ」と母を呼び、母が僕のもとへ歩んできた。

「じゃあ、まあ、いってくるよ」

そんな声のかけ方だった。
そんな声のかけ方しかできなかった。

小言が多い母を疎ましく思っていた時期で、気まづくて、場が悪くて、照れくさくて、こんな場面なのにそっけなく話すことしかできなかった。

ふと顔を上げると、目の前に立つ母が泣いていた。

気をつけて、いくんだよ

母親は顔を崩して泣きながら、僕を強く抱きしめてくれた。
その時、僕は初めて18年間育ってきたこの地から旅立つことの意味を実感した。

歩いて駅へ向かう道すがら、僕は涙が止まらなかった。
泣いて、泣いて、泣きまくって、名古屋へ向かう電車に乗った。

18歳の新生活は、そんな始まり方だった。

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旅のエッセイ:始まりは、いつも外の世界を知ろうとすることからだった
旅のエッセイ①:旅する本に出会った奇跡的な出会いの話
旅のエッセイ②:生まれて初めて映画館で映画を見た記憶
旅のエッセイ③:人と人が繋がる場所は世界中にあったという話
旅のエッセイ④:僕が旅に出る理由
旅のエッセイ⑤:世界一周を終えて3年間旅をしなかった理由と、3年後に旅をして感じたこと
旅のエッセイ⑥:旅について考えてみた。旅に物理的な距離は必要なのか?
旅のエッセイ⑦:「また会おう」と握手した。「元気でいてね」とハグをした。
旅のエッセイ⑧:台湾と聞いて連想する「ツボとハナと夢」
旅のエッセイ⑨:一家の命運を賭けた家族旅行の思い出について語ろう
旅のエッセイ⑩:初めて働いた職場で出会った絵描き
旅のエッセイ⑪:ネパールのチトワンからポカラへ移動しているバスで出会ったおまじないの話
旅のエッセイ⑫:マサイ族の男性から教えてもらった世界の真実についての話

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新生活が始まったみなさん、おめでとうございます。
こんな時期で不安なことも多いかもしれませんが、この春から過ごすあなたの新生活の心に少しでもリンクすれば嬉しく思い、今日はこんな文章を書きました。

よい旅を

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