【旅のエッセイ】台湾旅行のお土産に買った大きな壺と、酔っ払って買った犬

SOGEN

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この記事では、「旅のお土産」について、エッセイにしています。
父が台湾旅行で買ってきたのは、僕よりも身長が高い大きな壺でした。壺の料金よりも輸送費のほうが高いそうです。
今回はそんな旅のお土産について、綴っています。

 

旅のエッセイ」をカテゴリーで分類していて、旅の体験から得た自分なりの考えを物語にして書いています。

【旅のエッセイ】台湾旅行のお土産に、なにを買う?

先日会った友人が、台湾へ行った思い出を話してくれました。
マンゴーの甘さ、夜市の雰囲気、寺院の趣。

僕は楽しそうに話す友人の話を聞きながら、僕にとっての台湾の光景を思い出していました。
ツボとハナの話です。

今でも時々思い出す、台湾と聞いて連想する僕の話を聞いてください。

 

随分前の話になりますが、父と兄の二人だけで台湾へ旅行に行ったことがありました。確か兄が大学生の頃なので、いい大人2人だけの旅行です。それが家族にとっては、最初で最後の父と子の二人旅だと思います。

きっと父が行きたいと言い出して、大学生だった兄がそれに付き合った形だったのだと思います。
当時僕はまだ高校生で、学校や部活を休むことができずに行けませんでした。

そんな2人の旅は、お茶屋に行ったり、故宮博物館へ行ったり、ほのぼのとした良い旅だったそうです。

父が僕よりも大きな背丈の壺を買ったことを除いて。

台湾の寺院

【旅のエッセイ】台湾旅行のお土産に、壺を買った父

普段、買い物が好きというわけでもなく、洋服やカバンにお金をかけることがない父ですが、5年に1回ほどの割合で、家族がアっと驚くような買い物をするのが我が家の名物となっています。

久しぶりにその名物が現れたと思ったのが、この壺でした。

なんと高さが僕の身長よりも高く重量も僕より重いときています。

それってもうツボの役割を果たしてないよ?
花とか入れても、ちっとも顔を出さないよ?
水をいれたら最後、一生水を抜けないよ?
そもそもいくらなの、これ?
輸送費とかのほうが壺よりも高いんでしょ?

そんな疑問はいくらでも出てきましたが、父が自分で稼いだお金で、大満足な表情をして買ってきたのだから仕方がないですよね。

その壺は実家の玄関で、長く我が家のシンボルとして飾られていました。
花も水も入れられることなく、もちろん僕の身長よりも高く、堂々と飾られてあるわけです。

 

僕自身も台湾へは行ったことがありますが、台湾を思い浮かべると、父が壺を買った話の方を思い出してしまいます。

そうなると、自然に以前に父が買った家族がアっと驚く買い物のことが連想されていきます。
酔っ払って買ってきてしまった柴犬のハナのことを連想してしまいます。

柴犬のハナ

【旅のエッセイ】台湾旅行のお土産に買った壺、酔っ払って買ってきた犬

父が壺を買ってきた数年前の話になります。

休日の昼間からビールを飲んで酔っ払っていた父が散歩へ出かけてくると言っていました。
それならばと、当時飼っていたウサギのエサが無くなっていたことを思い出した母は「散歩ついでに買ってきて」と顔を赤くした父に伝えました。

今から思えば、それが全ての間違いの発端だったのですが、気づいた頃には後の祭りなのは世の常ですね。

それから数時間後。
どういうわけか父が持って帰ってきたものは、ウサギのエサとは全く似ていない柴犬のハナでした。

全く意味がわかりません。

 

私と目が合って、連れて帰ってほしそうだった
父は平然とそんなことを言っていたことを覚えています。

家族がアっと驚いた買い物、柴犬のハナ

ちなみに台湾の壺、柴犬にハナという系譜がありますが、それ以前に家族がアっと驚いた買い物は、飛騨高山へ両親が行ったときに、これも酔っ払って一目惚れして買ってきた、とてつもなく大きな戸棚でした。

どれくらい大きいって、長さ4m、高さ2mはあるような大きな戸棚です。
それを旅先で買う?と思うのですが、これも後の祭り。

 

そんな父の衝動買いではありましたが、ハナは我が家にたくさんの幸福をもたらしてくれました。

柴犬の雪遊び

【旅のエッセイ】台湾旅行のお土産と、酔っ払って買った柴犬ハナとの思い出

僕はハナと初めて出会った時のことを今でもハッキリと覚えています。

中学校からから帰宅すると、珍しく母が玄関まで出てきてくれました。

「実はね、お父さんが…」

母がそう言った瞬間、見たことのない小さな柴犬が、母に付いてくるように駆け足で玄関までやってきたのです。

「なに、なに、この犬?」

衝撃的だったハナとの出会いでした。

 

おデブになる前は、階段を昇り降りできたハナ。
僕が家に帰って2階にある自分の部屋に行くと、ホクホクのうんちがあったこと。
それ以降、自分の部屋の扉は閉めることは僕のマイルールとなった。

 

虚勢手術をして帰ってきた日。
「わたし、病気ですから」といった雰囲気で、しばらくベッドに引きこもっていた哀愁漂う姿。
真っ暗な部屋のベッドに寝転がり、1人静かに過ごしていたハナが、とても寂しそうだったこと。

 

98年フランスワールドカップ予選の韓国戦で、山口素弘の芸術的ループシュートが決まった瞬間。
そのあまりの興奮に、家族が揃って大歓声を上げた。
「うおーーー!」
この声に驚いた居眠り中のハナは、突然ビクっと起き上がり、そこから全く動けなくなった。腰をぬかしてしまったらしい。
それ以来、ハナはサッカー中継がはじまると、賑やかなリビングから離れ、静かな父の寝室へと逃げ込むようになった。

 

いつもの朝のこと。目覚めて自分の部屋を出る「ガチャ」という音を聞くと、ハナが階段を駆け上り、尻尾を振って迎えに来てくれた。
ひと通り撫でた後に靴下を真上に放り投げると、見事にキャッチするハナ。

いつからか、そんな遊びもハナはやらなくなりました。

 

ハナは穏やかで優しくて、散歩がきらいというおデブな柴犬。
みんなから愛されて、可愛がられた本当に素敵な犬。

そんなハナは、僕が長い旅をする数日前に亡くなりました。

ツボは父に幸福を、ハナは家族に幸福を与えてくれたんですね。

父の衝動買いもわるくないのかもしれません。

柴犬の眠り

【旅のエッセイ】柴犬のハナと、夢でサヨウナラ

ここからは追記です。

2017年。ハナが亡くなって7年が経ったある日のこと。僕は夢を見ました。

 

舞台は、実家に住んでいたときの僕の部屋。
今では兄家族が住んでいるため、今はもう存在しない光景です。

朝、目覚めて2階にある自分の部屋を出る「ガチャ」という音とともに、1階にいるハナが階段を登ってやってきました。ハナが生きていて、僕が実家で暮らしていた日々ではいつもの光景です。

それでも僕は、「ああ、夢か」と、どこかで感じながら、夢の世界を楽しんでいました。

 

いつものように階段から登ってくるハナを撫でようとするも、ハナは僕を通り過ぎてそのまま部屋の中に入り、ベッドの上に寝転び始めました。

「ハナ!」

僕はハナに声をかけながら自室に戻ると、ハナはお腹を出しながらベッドの上で仰向けになって撫でてほしそうに寝ています。

犬がお腹を出しながら仰向けになって寝ているポーズは、きっと誰が見てもかわいい。
いつものようにお腹を撫でてあげようとすると、僕の右手を両方の前足でガっと掴まれました。

え?と思っていると、表面上は変化のないハナが、僕の心の中に話しかけてきたのです。

(注:夢の中の話です)

 

元気か?ありがとうな。もしかすると会うのはこれで最後になるかもしれないからな。お礼を言いに来た。昨日今日の仲じゃないからな

 

その言葉を聞いた瞬間、僕は目を開けて、布団の中にいることを確認しました。

やっぱり夢だったんだ。
夢だと理解はしたけれど、寝ぼけている僕の意識は夢と現実の間を振り子のように揺れていて、頭が混乱しています。

同時に圧倒的な睡魔に襲われ、そのまま眠りそうになり、目をつぶりました。

だけど、奪われそうになる意識をなんとか保ちながら、僕はこの瞬間が特別な瞬間であることを強く感じました。
頭の上に置いてあるスマホをなんとか手にし、ほとんど目を閉じながら、すぐに夢の中で起こったことを一字一句逃さないように、メモをしました。
 

そして、メモを終えると意識を失ったように、すぐに寝ていました。

 

その日の午後に、ふとスマホのメモ画面を見ると、メモ書きにはこう書かれてありました。

元気か?
ありがとうな
もしかすると会うのはこれで最後になるかもしれないからな
お礼を言いに来た
昨日、今日の仲じゃないからな

 

僕はこのメモを見返すまで、その日見たばかりの夢を信じられないくらいサッパリと忘れていました。
それはもう圧倒的に記憶を無くしていたんですね。

不思議なものです。あんなに衝撃的な夢だったのに。
だけど、このメモを見た途端、この日の夢が鮮明に蘇り、夢の出来事を反芻するように思い返していました。

 

あれは、一体なんだったのでしょうか。死後7年が経って、夢の中で出会ったハナ。

僕はあの時ハナにガっと勢いよく掴まれた感触を今もはっきりと覚えているし、それはとても幸福なことだと思います。

 

その日以来、ハナとは夢でも一度も出会っていません。

旅のエッセイまとめ

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旅のエッセイ:始まりは、いつも外の世界を知ろうとすることからだった
旅のエッセイ①:旅する本に出会った奇跡的な出会いの話
旅のエッセイ②:生まれて初めて映画館で映画を見た記憶
旅のエッセイ③:人と人が繋がる場所は世界中にあったという話
旅のエッセイ④:僕が旅に出る理由
旅のエッセイ⑤:世界一周を終えて3年間旅をしなかった理由と、3年後に旅をして感じたこと
旅のエッセイ⑥:旅について考えてみた。旅に物理的な距離は必要なのか?
旅のエッセイ⑦:「また会おう」と握手した。「元気でいてね」とハグをした。
旅のエッセイ⑧:台湾と聞いて連想する「ツボとハナと夢」
旅のエッセイ⑨:一家の命運を賭けた家族旅行の思い出について語ろう
旅のエッセイ⑩:初めて働いた職場で出会った絵描き
旅のエッセイ⑪:ネパールのチトワンからポカラへ移動しているバスで出会ったおまじないの話
旅のエッセイ⑫マサイ族の男性から教えてもらった世界の真実についての話
旅のエッセイ⑬高校を卒業し、実家を出て一人暮らしを始めた日のこと
これまで世界50カ国以上旅をしている僕が、オススメのトラベルグッズ9選を紹介する
僕が企画しているタビノコトバについて
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