【旅のエッセイ】マサイ族の男性から教えてもらった世界の真実についての話

旅をしていると「自分の当たり前が、他の場所では当たり前でなかった」と感じることがある。そんな時に、世界は広いなあと感じるし、自分の価値観が凝り固まっていたなあと考えるし、僕は旅をしているなあと思う。

アフリカのケニアで出会った青年から、「リッチ」という言葉について考えたことを書こうと思う。

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旅のエッセイ:始まりは、いつも外の世界を知ろうとすることからだった
旅のエッセイ①:旅する本に出会った奇跡的な出会いの話
旅のエッセイ②:生まれて初めて映画館で映画を見た記憶
旅のエッセイ③:人と人が繋がる場所は世界中にあったという話
旅のエッセイ④:僕が旅に出る理由
旅のエッセイ⑤:世界一周を終えて3年間旅をしなかった理由と、3年後に旅をして感じたこと
旅のエッセイ⑥:旅について考えてみた。旅に物理的な距離は必要なのか?
旅のエッセイ⑦:「また会おう」と握手した。「元気でいてね」とハグをした。
旅のエッセイ⑧:台湾と聞いて連想する「ツボとハナと夢」
旅のエッセイ⑨:一家の命運を賭けた家族旅行の思い出について語ろう
旅のエッセイ⑩:初めて働いた職場で出会った絵描き
旅のエッセイ⑪:ネパールのチトワンからポカラへ移動しているバスで出会ったおまじないの話

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マサイマラ国立公園に向かう途中で旅を感じたこと

アフリカのケニアからタンザニアとの国境であるマサイマラへ国立公園への移動は、大きな四輪駆動のバンだった。
たまたま宿で出会った旅人六人でツアーを組み、動物の王国マサイマラ国立公園へサファリをすることになった。

遮るものがない広い空と、圧倒的に広がった草原地帯。
その地は日本や欧米諸国に比べて経済的な豊かさはないかもしれないけれど、代わりに有り余るくらいの豊かな自然や動物が生息している。なんとも幸せじゃないか。

ケニアの首都ナイロビの旧市街から、マサイマラ国立公園までは車で6時間ほどの移動だとガイドに伝えられた。何度かのトイレ休憩をはさみながら、車は順調に進んでいった。

数時間経った頃に、ドライバーから最後の休憩ポイントだと伝えられ、車は止まった。
長い時間車に揺られていたため、体を伸ばしてゆっくりしたくなって、僕は車を降りた。

トイレをさっとすませた後に、地面に腰をおろしながら、ぼんやり通行人を眺めていた。
そこには、耳に大きな穴が空いて耳たぶが伸び切っている現地の男性や、カラフルな民族衣装を身にまとった女性がいて、眺めていて飽きない。

こんなときに、ふと旅をしていることを実感する。

Tシャツに短パンのマサイ族と出会って話したこと

気分よく人々の行き来を眺めていると、ふとTシャツに短パン姿の黒人男性が僕の隣に座って声をかけてきた。

Where are you from ?

面倒なことに巻き込まれないように若干の警戒心をもちつつ、男性と話を続けた。

Tシャツ姿の男性は、自分のことをマサイ族だと話した。
僕はマサイ族といえば真っ赤な民族衣装に身を包んでいるものだと思っていたので、こんなラフな格好をしたマサイ族がいることに驚いた。
よく考えたら当然といえば当然なのだが、マサイ族にもいろいろな暮らしがあるのだ。

Are you rich ?

マサイ族の男性は、唐突にそう聞いてきた。
そんな単刀直入な質問は、とても困る。
日本で暮らしているぶんには自分がお金持ちだと思ったことなんてないが、海外を旅していると、日本の豊かさを実感する機会はいくらでもある。実際、きっとこの男性よりもお金はあるような気がする。だから、この男性の感覚でいえばきっと金持ちなんだろうけど、「そうだよ、リッチだよ」と言う気にはならない。

そんなことをグルグルと瞬間的に考えた結果、「わからない。日本では特にリッチなわけでも、貧しいわけでもない」と答えていた。

男性は納得していなそうな顔で、質問を続けてきた。

How many ※※※ do you have ?

ん? なんて?

wife !!

ワイフ!
奥さんは何人いるの?と聞かれた。ワオ!

一夫多妻制があるマサイ族ならではの質問に、思わず苦笑いし、高揚した。
そんな質問があるのだ、すごいすごい、これこそ自分の常識の外の世界だ、と妙に興奮した。

How many ※※※ do you have ?

妙に興奮している僕に、男性は続け様に質問をしてきた。
そして、肝心の部分が予想外の単語だったので自信がもてなくなり、僕は再び聞き返した。

cows !!

カウズ!
牛を何頭持っているんだ?と聞かれた。ワオワオ!!

牛が財産であり、一夫多妻制のマサイ族にとって、牛を何頭持っているかや妻が何人いるのかこそが「リッチ」かどうかを判断する基準となるのだ。

牛は持っていないんだ、と答えると、男性は「ゼロ?」と、ため息をつきながら首を振った。

Your are not rich
男性はそう言って、僕のもとを去っていった。

僕は最高に興奮し、やっぱり旅をしているなあ、と強く感じた。

自分がいる場所が、世界の全てではない

僕が旅をして学んだことの1つに、「場所や文化や歴史が変わると、常識ってこんなに違うんだ」ということだった。

rich」という単語から当時の僕はお金を自然と想像したけれど、マサイ族の男性は「妻」や「牛」を想像した。
きっと世界にはもっと多くの「rich」の形があって、そんなことを想像しただけで気分が軽くなる。

自分の感覚の外側にあるものを理解し、受け入れる視点をもつことができるようになったことは、僕にとってとても大きな出来事だった。

 

加えて、この出来事は僕に強い安心を与えてくれた。

なぜなら、今いる場所で受け入れられなくなったとしても、他の場所では受け入れられることなんていくらでもあると気づくことができたから。

日本は村社会で、「こうあるべき」や「こうしなければいけない」という意識が強く、他の人と合わせることを自然と求められることが多い。今いる場所で受け入れられなくなると、世界の全てから受け入れられていないと錯覚してしまうことだってあるはずだ。

学生時代の例がよい例で、校内の一部のグループから嫌われたからといって、校内にはもっと多くのグループがあるし、校外に出ればもっと多くのグループがあるし、もっともっと視点を広げれば自分の居場所になり得るグループなんて無限にある。

どこかで上手くいかなかったとしても、きっと自分を認めてくれる場所は他にもある

そんな当たり前の事実を実感をもって知っているだけで、強い安心を僕は与えてもらったような気がした。

 

今いる場所が世界の全てではないし、今いる場所の感覚が世界の全てではない。

きっとことの事実は、いつか僕や僕の家族を救ってくれるような気がしている。

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旅のエッセイ:始まりは、いつも外の世界を知ろうとすることからだった
旅のエッセイ①:旅する本に出会った奇跡的な出会いの話
旅のエッセイ②:生まれて初めて映画館で映画を見た記憶
旅のエッセイ③:人と人が繋がる場所は世界中にあったという話
旅のエッセイ④:僕が旅に出る理由
旅のエッセイ⑤:世界一周を終えて3年間旅をしなかった理由と、3年後に旅をして感じたこと
旅のエッセイ⑥:旅について考えてみた。旅に物理的な距離は必要なのか?
旅のエッセイ⑦:「また会おう」と握手した。「元気でいてね」とハグをした。
旅のエッセイ⑧:台湾と聞いて連想する「ツボとハナと夢」
旅のエッセイ⑨:一家の命運を賭けた家族旅行の思い出について語ろう
旅のエッセイ⑩:初めて働いた職場で出会った絵描き
旅のエッセイ⑪:ネパールのチトワンからポカラへ移動しているバスで出会ったおまじないの話

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