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沢木耕太郎さんがゴロウ・デラックスに出演した
稲垣吾郎さんがMCを務める『ゴロウ・デラックス』が、3月28日に最終回を迎えた。
そして、その最終回のゲストが「深夜特急」の沢木耕太郎さんだった。
僕はこの番組を録画し、ゆっくり見られる時に真剣に見たいと思っていて、ようやくこのGWのタイミングで見ることができた。
僕が長い旅をしたきっかけに、沢木耕太郎さんの深夜特急は多大な影響を与えている。
友人から勧められた深夜特急を読み、僕もこんな旅をしてみたいと思って日本から旅に出た。
沢木耕太郎さんの書いた『深夜特急』について、詳しく記事で書いたので興味のある方は読んでみてください。
2018年のクリスマスに放送されたラジオを聞いて、ブログに感想を書いた。
一年間で起こった出来事を旅と結びつけながら話すストーリーは、何気ない出来事でありながらその気づきの視点と鮮やかな話しぶりにいつも引き込まれる。
普段はテレビに出ることはない沢木さんが(稀にラジオには出演する。youtubeなんかにはけっこうアップされているので興味があれば聴いてみてください)ゴロウ・デラックスに出演した理由がまたカッコいい。
「基本的には気まぐれなんだけど…
分の悪い戦いをしている人には加勢をしたくなるって感じも、ないこともなくて」
沢木さんの出演を見た感想
簡単な感想を言えば「かっこよかった」
相槌の打ち方。
場を支配する質問力。
キラキラした目で相手の話を聞く姿勢。
人への強い興味。
71歳。
喜々として話す姿。
次にどんな展開がくるのだろうと人を惹きつける話の展開。
極上のストーリーテラー。
この人以上に話に引き込まれる人はなかなかいない。
かっこいいとは、こういうことだ。
沢木耕太郎さんはなにを話したのか?
〜エネルギーを得るには角度が必要である〜
番組の中でこんな話があった。
せっかくなので自分へのメモも兼ねて紹介しておく。
「私」と「現場」をつなぐのは、どのようにきれいに言い繕おうとも、やはり「好奇心」というものである。
「好奇心」が「私」を「現場」に赴かせる。
多かれ少なかれ「好奇心」というものは、誰でも持っている。
しかし、それがジャーナリズムの世界で意味をもつためには、「現場」に差し向けられる「好奇心」に、ある「角度」が必要なのだ。
そして、その「角度」こそが、その人の個性となり、結果的にその人の書くノンフィクションの個性となっていく。
「銀河を渡る」より
「角度が必要」
それは、どういうことかというと、僕が仮に稲垣さんのことを書こうと思ったとする。
例えば、1回今日会ったから書こうという気にはほとんどならない。
今ここで会ったのは、ひとつの線ですよね。
それが例えば一年後や二年後に、僕がふっと惹かれるような出来事があったとする。
そこで線が結ばれる。
要するに線が二本結ばれたときの交点が一個できないと、僕が書こうとか動こうとか取材しようというエネルギーにはならない。
では、交点が生まれて、僕が稲垣さんを書こうと思ったとする。
そうしたら、インタビューに行くじゃない。
「どうしてそんなによくインタビュアーは話をしてくれるんですか?」と聞かれるんだけど、それはすごく簡単なことで。
僕はその交点ができたときに、稲垣さんを「理解したい」と思う。
で、理解したいから正面向かって「あなたのことを理解したいと思うので、時間をくれませんか?」と言う。
それはその人にとって、割と事件なのよ。
そんなことって滅多にないから。
自分を理解したいと思う人が目の前に現れるって、人生でそんなことは滅多にない。
もし相手が心を開き、それに応じてくれれば、お互いの関係性は圧倒的に深いものになっていくので、自分がどれほどあなたのことを理解したいと願っているかを相手に伝えれば、相手はそれに対して応じてくれる。
そういう、ある種の自信があるんです。
一本目の線ってのは割とできるんだけど、もう一本鮮やかな線ができたときに、動き始める。
そんなことを話していた。
沢木耕太郎さんはなにを話したのか?〜高倉健との出会い〜
僕はモハメド・アリというボクサーをずっと追いかけていた。
最後のタイトルマッチを見ようかどうしようか迷っているうちに、もうチケットがなくなってしまって、ロスに住んでいる友人に「どうにかチケットが手に入らないかな」と頼んでみた。
「もうない」と言われて残念に思っていたが、一日経って「チケットが一枚手に入った」と連絡入った。
友人は『実は高倉健さんのためにチケットを一枚とってあったんだけど、高倉さんに電話したら「俺が見るより、沢木さんが見たほうがいいんじゃないか。だから譲ってあげてくれ」と言っていた。だからそれは遠慮しないでもらっていいんじゃないか』と言った。
私はタイトルマッチのチケットをもらった。
そして、その日。
ラスベガスでモハメド・アリが滅多打ちにあって、初めてKOで敗れるわけですね。
試合後、僕らはホテルへ帰ると通路からカチャカチャと色々な新聞記者やライターたちが原稿を書いている音が聞こえてくるんですね。
僕は仕事じゃなく見に行ったわけなんだけど、本当だったら高倉さんが見ることができたんだから、高倉さんのために試合のレポートを書こうと、長い手紙を書いたわけです。
翌朝、書き終わって手紙を送って、そしたら高倉さんから「ありがとう」というメッセージをもらった。
そこから関係が始まったんです。
沢木耕太郎さんはなにを話したのか?〜旅で一番重要なことはなにか?〜
旅で一番重要なことはなにかと思うと「人に聞くこと」なんです。
旅先で人に聞く。わかっていても聞く。
ここから駅に行くにはどうしたらいいんですか?
「沢木さんって、なんでも人に聞いちゃうんですね」とよく言われる。
そこに抵抗はない。だって知らないんだから。
聞く。場合によっては、そこからなにかが始まる。
尋ねて、耳を澄ませて、聞くんですよ。
旅をするコツはなんですか?ともし聞かれたら、人に尋ねることです。
ゴロウ・デラックス最終回。番組が終了して残念
沢木耕太郎さんの回に限らず、ゴロウ・デラックスはとてもおもしろい番組だった。
終了したのはとても残念です。
最終回にこうやって沢木さんが出てくれたことは、8年も続けた番組へのご褒美だったんだろうなと思う。
本当にお疲れさまでした。