深夜特急第5巻と第6巻|内容とあらすじ読書感想文

この記事は、沢木耕太郎さんの著書『深夜特急第5巻と第6巻』のあらすじ・内容と魅力について書いている記事です。

バックパッカーのバイブルとまで言われた「深夜特急全6巻」の後編。
旅のルートをトルコ・ギリシャ・イタリアからスペイン・ポルトガルと進め、最終目的地であるイギリスはロンドンへと旅します。沢木耕太郎さんが旅の最終盤になにを思い、旅を終える決断をしたのかが描かれています。

深夜特急各巻のあらすじと読書感想文

沢木耕太郎『深夜特急』あらすじと内容

本好きなSさん
本好きなSさん

『深夜特急』って、旅好きの人には有名な本だけど、どんな本なの?
一度読んだことがあるけど、最後はどんな終わり方をするんだっけ?
トルコ・ギリシャ・ヨーロッパの一人旅について知りたい!

最高の旅本「深夜特急」の最終巻について、あらすじや内容・感想を紹介した記事です。
全6巻を小分けにし、あらすじや内容、時代背景、作品の魅力について紹介しています。

深夜特急って、どんな本?

深夜特急は、ノンフィクション作家の沢木耕太郎さんが、1970年代にインドのデリーからロンドンまでを乗り合いバスで旅をしたときのことを描いた紀行文です。

1986年に発刊された古い本ですが、今でも「バックパッカーのバイブル」と呼ばれていて、多くの旅人に影響を与えた本です。表紙もかっこいいですよね。

深夜特急 第5巻の目次・あらすじ・内容・ルート

深夜特急(文庫版)第5巻の目次

  • 第十三章 使者として(トルコ)
  • 第十四章 客人志願(ギリシャ)
  • 第十五章 絹と酒(地中海からの手紙)

深夜特急第5巻 『第十三章 使者として(トルコ)』あらすじ/内容/ルート

深夜特急第5巻のあらすじをネタバレありで要約します。

第十三章で沢木耕太郎は、アジアとヨーロッパが交わる国・トルコに入国した。
トルコは沢木にとって、この旅で唯一立ち寄らなければならない場所だった。理由は、日本の友人から手紙を預かっていて、それをトルコに住む女性に渡さなければならなかったから。その女性を探して手紙を渡すことが、沢木耕太郎に課せられた唯一の仕事だった。

イスタンブールではホテルの近くの食堂で朝食を食べ、ブルーモスクで礼拝を眺め、気ままに散歩する沢木耕太郎らしい旅をした。トルコの人々は親切で、必ず誰かが声をかけてくれた。
もちろんトラブルもあった。街角で熊を散歩させている人がいて、写真を撮ると、法外な金を要求してくる。「払えない」と言うと凶暴な熊を使って恐喝してくる。

ハメられたり、やり返したりしながら、沢木耕太郎はイスタンブールを楽しんだ。

深夜特急第5巻 第十三章のルート

エルズルム→トラブゾン→アンカラ→イスタンブール

深夜特急第5巻 『第十四章 客人志願(ギリシャ)』あらすじ/内容/ルート

深夜特急第5巻第十四章で沢木耕太郎はトルコからギリシャへ入国した。

トルコからギリシャに入ることで、アジアからヨーロッパへ、イスラム教圏からキリスト教圏へ、茶の国からコーヒーの国へ、Cの茶の国からTの茶の国へと、違う種類の国へ来てしまったと実感した。
何の不都合もないはずなのに、なんとなく物足りなく感じている。具体的に何がどう違っているのかは明瞭では無いが違っていると言う感じが消えないまま旅を続けた。

ある出来事から沢木は「変わったのは土地ではなく、自分自身なのかもしれない」と思い至る。ギリシャに入って、何かが違ってしまったように感じられるのは、土地が変わったせいではなく、私自身だったのかもしれない。
そしてまたある出来事から、「変わったのは、土地でもなく、私でもなく、旅そのものなのかもしれない」と思い至る。
確かに土地も、私も変化するだろう。だが、それ以上に、旅が変化していたのだ。

沢木は自身の旅を幼年期、少年期、青年期を経て、壮年期や老年期に入っていることを実感する。

深夜特急第5巻 第十四章のルート

イスタンブールからケシャン次は国境の町イプサラー ギリシャ入国ー テサロニキー アテネーミケーネーースパルターミストラートリポリーオリンピアーアルゴスーパトラス

深夜特急第5巻 『第十五章 絹と酒(地中海からの手紙)』あらすじ/内容/ルート

深夜特急第5巻第十五章は、第八章ネパール以来の手紙形式になっている。ギリシャからイタリアへ渡る地中海の船の上での出来事を、手紙として誰かに書いた章だ。

沢木耕太郎は地中海に浮かぶ船の上で「体が空っぽになってしまったような虚しさ」を感じていた。
地中海に浮かぶ船の上でウイスキーを飲みながら、沢木は自身を空虚にさせている喪失感の実態を「終わってしまった」からだと理解する。
まだこれからヨーロッパを渡って今までと同じくらいの移動距離が残っているとしても、それはやはり今までの旅とは同じではないということを感じていた。

『自分の道を探しながら、自分の存在を滅ぼし尽くす」という至福の時を持てる機会を、僕はついに失ってしまったのです』という言葉が印象的な、内側の旅を描いた章。

深夜特急第5巻 第十五章のルート

ギリシャのパトラス→イタリアへの船

深夜特急(文庫版)第5巻の感想

深夜特急第5巻は沢木耕太郎さんにとって、非常に迷いを強く感じるような描写が多くあった。

エネルギーに満ちていた第1巻・第2巻とは全く異なり、どこか冷めたような、虚無感を感じさせるような描写が多数あった。

実際、1986年に深夜特急は「第1便」「第2便」を出版した(文庫版で言う1巻〜4巻)が、1992年になるまで第3便(文庫版5巻・6巻)を出版できずにいる。
沢木耕太郎にとっても、この5巻をどう表現すればいいのかかなり迷ったのではないだろうか。

旅と人生を交錯させて話をすることはかなり使い古された手法であり、沢木耕太郎自身もその表現に辟易していたが、実際に長い旅をしてみるとやはり旅と人生はリンクする部分が多くある。

沢木耕太郎も例外なく自身の旅を、「幼年期」「少年期」「青年期」「壮年期」「老年期」と表現し、旅が進むとともに変化していくことを綴っている。

そんな沢木耕太郎の変化を感じながら読み進めると、深夜特急がただの旅行記ではなく感じ、より一層楽しめるかと思います。

深夜特急 第6巻の目次・あらすじ・内容・ルート

深夜特急(文庫版)第6巻の目次

  • 第十六章 ローマの休日
  • 第十七章 果ての岬
  • 第十八章 飛光よ、飛光よ

深夜特急第6巻 『第十六章 ローマの休日』あらすじ/内容/ルート

いつものようにイタリア国内をバスで旅しようとしていた沢木耕太郎だが、長距離バスの文化が乏しかったイタリアでは、インフォメーションや町で出会う人々皆が列車で行けと口々に言う。
沢木耕太郎はヨーロッパに入ってスムーズに旅の移動が進むだろうと予想していただけに、いい意味で裏切られ、ちびちびとバスでの移動を楽しんだ。

ローマにたどり着いた沢木は、ヴァチカン市国にあるサン・ピエトロ寺院に行き、ミケランジェロの「ピエタ」に衝撃を受ける。フィレンツェの街並みを含め、創作力の高さに満足し、フランスへと入国する。

リゾート地・モナコへ行くも、ジャケット着用していないことからカジノに入れずにマカオの再現とはならなかったが、フランス南部を移動し、沢木は旅の終わりが見えるパリまで数時間の距離にいることを実感する。

深夜特急第6巻 第十六章のルート

ブリンティジ→バーリ→バルラッタ→フォッジオ→ローマ→フィレンツェ→ピザ→ジェノヴァ→モナコ→ニース→マルセイユ

深夜特急第6巻 『第十七章 果ての岬/内容/ルート

リスボンで偶然出会った男と「サグレス」と書かれたビールを飲んでいた沢木耕太郎は、男にサグレスの意味を尋ねると「イベリア半島の西南の端」だと言われた。
旅の終わりの地を探していた沢木耕太郎は、地図を広げ、海が見えるだろう岬であることを確認し、サグレスへ向かうことにした。

夜にサグレスに到着した沢木耕太郎はその日の宿泊地を探したが、シーズンオフということもあってなかなか宿泊地を見つけられない。ようやく見つけたペンションもシーズンオフのためクローズしていたが、好意から泊まらせてもらえることになった。
快適な部屋と安い料金にスタッフの優しさが加わって満足して眠ると、翌朝に窓を眺めると太陽が水平線から昇っているところに出会った。

一日を心地よく過ごした沢木は、様々な偶然からサグレスにたどり着いたことを思い返し、「ここに来るために長い旅を続けてきたのではないだろうか」と感じ、旅を終わることを決めた。

深夜特急第6巻 第十七章のルート

マルセイユ→バルセロナ→バレンシア→マドリード→バダホス→カヤ(国境)→エルヴァス(ポルトガル)→リスボン→ラゴス→サグレス

深夜特急第6巻 『第十八章 飛光よ、飛光よ』あらすじ/内容/ルート

パリで偶然出会った日本人に格安で部屋を借りた沢木耕太郎は、クリスマスや年末をその部屋で過ごした。
部屋はシャンゼリゼ大通りを凱旋門に向かって歩き、そこを曲がってすぐの建物で、窓からエッフェル塔の先端が見える優雅な屋根裏部屋だった。
パリで数週間を過ごし、沢木耕太郎は深夜特急の旅の最終目的地であるロンドンへと旅立った。

入国審査で徹底的に調べられた後になんとか入国した沢木は、ロンドンの郵便局に行って電報を打とうとするも、電報はどこの電話ボックスからも打てることを知り、どこからでも日本へ電報を打てることを発見する。

そうして、「ワレ到着セリ」と打とうと思っていた電報を、「ワレ到着セズ」と打った。

深夜特急第6巻 第十八章のルート

サグレス→ラゴス→ファロ→ヴィラ・レアル→アヤモンテ→ウェルバ→セビーリャ→マラガ→コルドバ→トレド→マドリード→パリ→ロンドン

深夜特急(文庫版)第6巻の感想

ヨーロッパに入って深夜特急の旅の最終盤を意識した沢木耕太郎は、「旅の終わりどころ」を探すように旅を続けていた。
僕も1年半と長い旅を経験したことがあるのでわかるのだが、長い旅を続けると「この旅をどこで終えよう?」と考えるようになったことを思い出した。

そして、その「旅の終わり」を決意した地・ポルトガルのサグレスでの話が、深夜特急の旅で一番美しい描写になっている。

もっと刺激的な箇所や、楽しい箇所、旅らしい箇所はあったが、「深夜特急で一番美しい描写」は、サグレスで過ごした時間のように感じた。

▶深夜特急第6巻の名言

ふと、私はここに来るために長い旅を続けてきたのではないだろうか、と思った。いくつもの偶然が私をここに連れてきてくれた。その偶然を神などという言葉で置き換える必要はない。それは、風であり、水であり、光であり、そう、バスなのだ。

深夜特急第六巻/沢木耕太郎

そしてこれが沢木耕太郎らしい気づきだと感じたのが、「茶」の描写。

日本というユーラシアの東の果ての国から出発し、深夜特急の旅はアジアからヨーロッパへと渡る旅だった。
宗教では仏教、イスラム教の国からキリスト教の国へ進むと同時に、チャイ、チャといった「C」の茶の国から、ティー、テといった「T」の茶の国にへと旅が切り替わっていく。ギリシャも、イタリアも、フランスもスペインもすべて「T」の茶の国なのだが、最後のユーラシアの果てにあるポルトガルでは茶が再び「C」で始まる国になっていた。

▶深夜特急第6巻の名言

私は髭の息子が入れてくれた香り高い紅茶を飲みながら、これはあの懐かしい「C」の紅茶なのだと、笑いたくなるのをこらえながら思っていた。私は「C」より出てて、今ふたたび「C」に到ったのだ。

深夜特急第六巻/沢木耕太郎

こういう表現が沢木耕太郎さんらしく、とても美しく思う。

沢木耕太郎さんの著書『深夜特急 第5巻・第6巻』まとめ

深夜特急は、「インドのデリーからイギリスのロンドンまでを乗り合いバスで行く」をテーマに、1970年代に著者の沢木耕太郎さんが、ユーラシア大陸横断の旅をした話です。

文庫本では全6巻と長い印象がありますが、1巻200ページほどと文量は薄く、各巻ごとに国や文化が異なるのでとても楽しめるかと思います。

5巻、6巻はユーラシア大陸を横断していき、いよいよ旅の最終目的「ロンドン」へとたどり着きます。
その最終目的地のロンドンい着くまでに、沢木耕太郎さんはどんなことに出会い、なにを感じたのか?

旅行記・紀行文の傑作「深夜特急」をぜひ、読んでみてください!