藤代冥砂|「愛をこめて」を読んで考えた

書評記事を書くことを続けてみる

このブログの読者から「たくさん本を読んでいるのでオススメの本を教えてほしい」と伝えられたことがある。

いろいろ考えた結果、読み終わった後の記憶が新しい状況の中で、記事を1本書くことを続けてみることにした。

決意してから16冊目は、写真家・藤代冥砂さんの「愛をこめて」について書いてみる。

藤代冥砂|愛をこめて

愛をこめて|藤代冥砂


愛をこめて

藤代冥砂とは?
写真家。妻の田辺あゆみとの日々を撮影した「もう、家に帰ろう」「もう、家に帰ろう〈2〉」や、世界一周の旅をまとめた「ライド・ライド・ライド」は僕が最も好きな本のうちの一冊。これまで読んできた1300冊を全て記録している僕が、本当にオススメする「写真家が書いた本」心からオススメできる面白い「旅の本・紀行文20冊」の記事でも紹介しているが、心に響く文章が特徴的な作家でもある。

久しぶりに藤代冥砂さんの文章を読みたくなって、本棚から取り出して読み返した。

藤代さんは写真家が本業なのだろうけれど、なんと言っても文章がいい。
もう、家に帰ろう」でも、日々を淡々と記録している写真もいいのだが、そこに一文だけ記されているキャプションがその写真を更に強く引き立たせる。

これまで読んできた1300冊を全て記録している僕が、本当にオススメする「写真家が書いた本」の記事でも書いたが、写真家の書くは美しいものが多いのだが、その中でも星野道夫さん・石川直樹さんと並んで最も美しい文章を書く写真家の一人と言っていいだろう。

後ほど藤代冥砂さんの他の本も紹介するので、興味があればぜひ手にとってみてほしい。

「愛をこめて」に書かれていた言葉を紹介する

僕は本を読んだら気になった文章をノートに書き記す習慣を、もう15年近く続けている。

15年前から私が本を読んだら必ず行っている2つの習慣

インプットの吸収率が圧倒的に上がるし、なにより目に見える形で記録されていくことが自分の自信になる。

本書から気になった文章を紹介する。

私はそういった太陽の時間に浸りながら、この村に生まれ、この村に暮れていく一生はどんなだろうという想像を楽しんだ。
五つある村は、どれも海へと落ちていく斜面の上に作られている。大げさに言えば、滑り台の上に村がある。実際村の中心を海に向かって貫く道の上にボールを置いたら、海までずっと転がり続けるだろう。
もし、この村のどこかに生まれていたら、私は毎日坂道を上り下りして生活しているはずだ。登下校も坂道を、デートも坂道を、喜びに溢れる時も失意に沈む時も坂道を、足が弱り誰かに手を引かれる時も坂道を行き、自分を入れた棺桶も坂道を行くのだろう。
私は、空からの太陽と、地中海に反射する太陽とに照らされながら、坂道に生きる自分の一生を最後まで想像し終えると、大きく息を吸い込んだような気分になった。
旅をする楽しみの一つは、こんな風に、訪れた場所に生きる自分を想像することでもある。現実には一粒の人生を生きるしかない私でも、幾通りの人生を生きてみることができる。旅するということは、そうして遠くの土地の未知だった暮らしを自分の中に通していくことでもあるだろう。

イタリアのチンクエテッレという崖の上に立つ五つの村を訪れたときを振り返って書いた文章だ。ちなみに、僕も行ったことがある。カラフルな色の家々が崖の上に立った美しい村で、イタリアの町の中で一番印象に残っている。

旅をして知らない土地を訪れ、人と出会い、食事をとることで、その土地を想像することができるようになる。

「旅をすることで、想像することができるようになる」というのは僕もずっと思っていることで、「旅する本に出会った奇跡的な出会いの話」にも書いた。

【1年半の世界一周旅行中に最も印象に残った話】旅する本に出会った奇跡的な出会いの話

「愛をこめて」を読んで思ったこと

写真家・藤代冥砂さんは、旅をすると必ずエアメールを妻に送る。息子が産まれてからは、息子にも宛てるようになった。
そのエアメールとともに、世界各地へと旅したときのことをエッセイとして書き記しているのがこの一冊だ。

藤代さんはとにかく視点が優しく、深い。こんな文章を書けるようになりたいとすら思う。

時々読み返したくなる一冊。

この本の評価
面白さ
(4.5)
吸収できた言葉
(4.5)
デザインの美しさ
(4.0)
総合評価
(4.5)

その他の藤代冥砂さんの写真集を紹介する


もう、家に帰ろう
妻の田辺あゆみさんを撮影した写真集。
写真に添えられている一文がグっとくる。


ライド・ライド・ライド
僕が最も好きな本のうちの一冊。


SKETCHES OF TOKYO
東京の高層ホテルの一室のみで撮影した53人のヌード写真集。

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