【読書感想文】写真家・石川直樹さん著作「この星の光の地図を写す 」

この記事では、リトル・モアから出版されている「写真家・石川直樹さんの著書「この星の光の地図を写す」の書評記事」です。僕が一番影響を受けた写真家です。

どこよりも詳しい読書感想文の総まとめ|読みたい本が見つかる

石川直樹さんの写真集「この星の光の地図を写す」とは?

この星の光の地図を写す|石川直樹


この星の光の地図を写す <北極カバー>

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石川直樹とは?
写真家。人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表し続けている。北極、南極、ヒマラヤ8000mといった極地、ニュージーランドの原生林、ポリネシア地域に浮かぶ島々、大分県の国東半島など、フィールドは様々。写真は土門拳賞、文章は開高健ノンフィクション賞を受賞している。
NAOKI ISHIKAWA WEBSITE

写真集「この星の光の地図を写す」の著者・石川直樹さんは、僕が一番影響を受けた写真家です。

8000m峰に何座も登って写真を撮ったり、北極から南極までを旅したり、太平洋をDIYで作成した熱気球で渡ろうとしたり、冒険家としての側面もありながら写真家として超一流の作家です。
僕もオススメの旅本やエッセイを紹介した記事で、石川直樹さんの書籍は紹介しているので、よかったら読んでみてください。

僕が写真展をやろうと思った最初の最初のきっかけは、石川さんのワークショップに行って写真のセレクトの視点を学び、東松泰子さんのワークショップに行って写真の現像の方法を学び、あとはよい写真さえ撮ることができれば発表できると思ったからです。

その辺りのことは、「写真を撮らなくなっていた僕が、再び写真を撮り始めた理由」という記事で書いたので、興味のある方は読んでみてください。

僕の写真活動は、飄々と写真論を語る石川さんに大きな影響を受けたことは間違いない。

そんな石川さんのこれまでの作品のオムニバス的な作品である「この星の光の地図を写す」は、石川直樹を知るうえでオススメの一冊である。

「この星の光の地図を写す」に書かれた石川直樹さんの名言・名文

僕は本を読んだら気になった文章をノートに書き記す習慣を、もう15年近く続けている。

インプットの吸収率が圧倒的に上がるし、なにより目に見える形で記録されていくことが自分の自信になる。

本書から気になった文章を紹介する。

家の玄関を出て見上げた先にある曇った空こそがすべての空であり、家から駅に向かう途中に感じるかすかな風の中に、もしかしたら世界のすべてが、そして未知の世界に至る通路が、かくされているのかもしれません。
人は生きている間にいろいろなことを忘れてしまう。あれほど鮮烈な光景も、あんなに強烈な体験も、あんなに嬉しかったことも苦しかったことも、いつしか少しずつ薄れ、あるいは断片的になっていく。
そうした自分のさまざまな経験を繋ぎ止めてくれているのが、ぼくにとっては写真である。この二年間、あちこちの美術館で設営に立ち会いながら折に触れて自分の写真を見直し、そこから引き出され、引き寄せられる記憶があって、それは過去を振り返るというよりはむしろこれからの道筋を示してくれる文字通り「光の地図」として、ぼくの前に立ち現れた。

二つ目の言葉が石川さんのこれまでの旅や人生の背景を想像したときに、途方もなく突き刺さる。

写真展をすると、誰よりも自分の写真を見続けることになる。
その作業は過去を振り返り、今を考え、未来の道を示してくれる。

石川さんにとってはそれが写真なだけで、きっとそれは人それぞれの生き方によって異なる。ある人は包丁だろうし、ある人はメガネかもしれない。

立ち止まって見つめると記憶を引き出されるような、そんなものがあると人生は豊かになるのかもしれない。

「写真展を開いてみたい」という方のために、「ゼロから開催する写真展の始め方」というシリーズ記事を書いたので、よかったら参考にしてください。

「この星の光の地図を写す」を読んだ読書感想文 まとめ

ヒマラヤの8000mの山々の写真も、北極や南極も、ポリネシア地域に浮かぶ島々も、洞窟壁画も、全てが石川直樹の歩いてきた道であり、見たことのない圧倒的な景色でありながら不思議とここからの距離を強く感じることはない。

それはきっと、望遠レンズのない同じカメラで撮ることで石川さんの視点が固定されているというのも一つの要因だろう。
対象との距離感が同じだから、とても見やすい。

今までの写真集のベストアルバムのような、多くの写真集から少しずつ写真をピックアップした一冊。

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この本の評価
面白さ
(4.0)
吸収できた言葉
(4.0)
デザインの美しさ
(4.5)
総合評価
(4.0)

写真家・石川直樹さんのその他のオススメ写真集を紹介

個人的には写真集にはストーリーがあったほうが楽しめるので、他にももっと好みの写真集はある。
また、文章もとても秀でているので、こちらも読んでみると面白いと思う。

【写真集】

【文章】

全ての装備を知恵に置き換えること/石川直樹

全ての装備を知恵に置き換えること (集英社文庫)

写真家・石川直樹さんがとても好きなのだが、その石川さんを好きになったきっかけは、この本からだった。
地図やコンパスなどを持たずに夜空に浮かぶ星と地形だけで航海を行うミクロネシアの旅、高校2年生のときに一人で訪れたインドへの旅、北極から南極までを自転車やカヤックなどの人力で移動したPOLE TO POLEの旅、文化も言葉も同じ土地が、国境という線を越えるだけで分断されることを実感させてくれる。

石川さんがまだ20代の頃に訪れた旅について、そして彼が旅を通して感じた世界との繋がりについて書かれているこの本は、写真家が写真では表現しきれない部分を愚直で真っ直ぐな言葉で鮮やかに描いてくれている。

美しいものを懐かしいと思うのは、太古の記憶と自分自身がどこかでつながっているからだろうか。

極北へ 石川直樹


極北へ

写真家・石川直樹の極地の旅にまつわるエッセイ。

全ての装備を知恵に置き換えること」が今までの様々な旅について感じたことを綴っていたのに対し、今作は極北に特化した文章なのもおもしろい。
極北の世界を体感しに行きたくなる。

動物と人間が同じ目線をもち、お互い畏怖の念をもって向き合える大地は、今や希有な存在である。
「はるか昔、人間と動物が同じ言葉を話していた」という先住民の神話はおとぎ話ではなく、畏れるべき存在をもっていた本来の人間の思考から生まれたものだったのだ。眠っていた野生を呼び覚まし、今見ている世界が世界のすべてではないということを思い出すためには自分と切り離されたものとして風景を眺めるのではなく、自分と繋がる環境として地球を感じなくてはならない。
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これまでの読書感想文一覧

1)角幡唯介|エベレストには登らない
2)菅俊一・高橋秀明|行動経済学まんが ヘンテコノミクス
3)中田敦彦|中田式ウルトラ・メンタル教本
4)戸田和幸|解説者の流儀
5)石川直樹|この星の光の地図を写す←今回の記事
6)岸見一郎|哲学人生問答
7)渡邊雄太|「好き」を力にする
8)高橋源一郎|ぼくらの文章教室
9)石川直樹|まれびと
10)堀江貴文|英語の多動力
11)森博嗣|作家の収支
12)鈴木敏夫|南の国のカンヤダ
13)森博嗣|森助教授VS理系大学生 臨機応答・変問自在
14)米沢敬|信じてみたい 幸せを招く世界のしるし
15)馳星周|馳星周の喰人魂
16)藤代冥砂|愛をこめて
17)佐藤優|人生のサバイバル力
18)せきしろ|1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった
19)服部文祥|息子と狩猟に
20)ブレイディみかこ|ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
21)河野啓|デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場
22)幡野広志|他人の悩みはひとごと、自分の悩みはおおごと。
23)内山崇|宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶
24)近藤雄生|まだ見ぬあの地へ 旅すること、書くこと、生きること
25)岸田奈美|家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった
26)玉樹真一郎|「ついやってしまう」体験のつくりかた
27)村本大輔|おれは無関心なあなたを傷つけたい
28)小松由佳|人間の土地へ
29)服部文祥|サバイバル家族
30)石川直樹|地上に星座をつくる
31)加藤亜由子|お一人さま逃亡温泉
32)沢木耕太郎|深夜特急
33)ブレイディみかこぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2
34)沢木耕太郎|深夜特急第1巻・第2巻
35)沢木耕太郎|深夜特急第3巻・第4巻
36)いとうせいこう|国境なき医師団を見に行く
37)ちきりん|「自分メディア」はこう作る!
38)村上春樹|村上T 僕の愛したTシャツたち
39)鈴木賢志|スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む
40)沢木耕太郎|深夜特急第5巻・第6巻
41)落合陽一|0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書|
42)早坂大輔|ぼくにはこれしかなかった。BOOKBERD店主の開業物語|
43)小永吉陽子|女子バスケットボール東京2020への旅
44)辻山良雄・nakaban|ことばの生まれる景色
45)岡田悠|0メートルの旅
46)トム・ホーバス|チャレンジング・トム
47)長谷川晶一|詰むや、詰まざるや 森・西武VS野村・ヤクルトの2年間
48)田中孝幸|13歳からの地政学
49))国分拓|ガリンペイロ
50))サトシン・西村敏雄|わたしはあかねこ
51))林木林・庄野ナホコ|二番目の悪者

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