この記事は、NHKスペシャル「大アマゾン 最後の秘境」第二集「ガリンペイロ 黄金を求める男たち」で放送された内容をより深く描いた書籍『ガリンペイロ』のあらすじ紹介と読書感想文です。
「大アマゾン 最後の秘境」は、その内容の濃さから放送後に大きな反響があり、これまで何度も再放送化されてきたNHKの名作ドキュメンタリーで、そのディレクターを務めた国分拓さんが本書「ガリンペイロ」の著者です。
「ガリンペイロってなに?」
「アマゾンの秘境に興味がある」
「ノンフィクション本が好き」
ノンフィクション好きにはたまらない一冊「ガリンペイロ」のあらすじ紹介から読書感想文を書きました。
『ガリンペイロ』は、【2022年上半期のベスト本】本当に面白かった本ランキングで2位として紹介しています。
2022年上半期に読んだ本から面白かったオススメ本ランキング11目次
『ガリンペイロ』とは?アマゾンの秘境を追ったノンフィクション本
NHKのディレクターである国分拓さんが書いた本『ガリンペイロ』は、大きな反響を呼んだNHKドキュメントを書籍化したノンフィクション本です。
本の冒頭で紹介されている『ガリンペイロについての解説』がいきなり引き込まれます。
ガリンペイロとは…
アマゾン奥地の地図にも描かれていない辺境にある不法地帯の金鉱山。
ならず者たちが黄金の帝王になることを夢見て金を掘り続けている場所がある。
そこでは「掟」に従うならば、殺人者だろうが、ゴミ箱で生まれた者だろうが、誰でも受け入れる。
そんな日本の常識とはかけ離れたアマゾンの土地に潜入取材し、極上の文章力で表現した国分拓さんの傑作ノンフィクション本が「ガリンペイロ」です。
ガリンペイロ…
なんだかちょっと本の内容紹介を読んだだけでハラハラしますね
そうですね、日本とはかけ離れた常識で生きている人たちのドキュメント本ですからね!
どんな所が、日本の常識とはかけ離れてるんですか?
まず、地図に描かれていない不法地帯で、金を掘っている男たちのドキュメントなんですが、すでに訳わからないですよね(笑)
場所はアマゾンの秘境。何らかのトラブルで毎年何人も死人が出る場所で金を掘る男を「ガリンペイロ」と呼ぶのですが、1グラム4000円の金が10キロ(4000万円)出ることもあって、一攫千金を目指すならず者たちが集まる世界なわけです。
「ガリンペイロ」は、金を掘る人たちのことなんだ!
そうです、そんな不法地帯のならず者たちを取材したドキュメント本なんで、緊張感がハンパないわけなんですが、それを著者の国分拓さんが極上の文章力で表現してるんですよね!
ガリンペイロの著者でNHKディレクターの国分拓さんとは?
ガリンペイロの著者でNHKのディレクターでもある国分拓さんは、これまでアマゾンの奥地を舞台に取材を重ねて映像化・書籍化してきたノンフィクションの名手です。
これまで何度も再放送化された「NHKスペシャル 大アマゾン 最後の秘境」全4集を見たことがある方も多いのではないでしょうか?
- 第1集「伝説の怪魚と謎の大遡上」
- 第2集「ガリンペイロ 黄金を求める男たち」
- 第3集「緑の魔境に幻の巨大ザルを追う」
- 第4集「最後のイゾラド 森の果て 未知の人々」
この第4集「最後のイゾラド 森の果て 未知の人々」を国分拓さんが書籍化した『ノモレ』は、このブログ「23時の暇つぶし」でも傑作本として何度も紹介してきました。
2019年に読んだ本の中から面白かった本ランキング第1位としても紹介しています。
アマゾン奥地の原住民を追ったドキュメント
また、国分拓さんのデビュー作となった「ヤノマミ」は、アマゾン取材の原点となる一冊で、大宅壮一ノンフィクション賞の受賞作でもあります。
国分拓さんは、これまでアマゾンの奥地を取材した作品を多く生み出してきました。
本だけでも、「ヤノマミ」⇒「ノモレ」⇒「ガリンペイロ」と順番に3作あります。
大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した「ヤノマミ」と比べて、「ノモレ」や「ガリンペイロ」はノンフィクションの中でも異色の作品と言えるかもしれません。
ノンフィクション本は「こういうことがあった」という事象をもとに、第三者的な視点で事象をレポートする手法が一般的ですが、「ノモレ」や「ガリンペイロ」といった国分拓さんの作品は一つの物語のような構成で、まるで小説かのようにエモーショナルに作品を仕上げていくんですね。
読み進めていくと「これって小説なんじゃない?」と思うような、国分拓さんの創造力・文章力が強調されたような場面が多々でてくる。
これはノンフィクションの世界で良い悪いと意見が出そうな気もするのですが(実際ノモレはあんなに面白いのにノンフィクションの賞を受賞していない)、いち読書としては感情移入しやすく、舞台の臨場感が伝わってきて、読んでいるドキドキや興奮が異常なくらいに上がってくるんですね。
国分拓さんの本3作を個人的にランキング形式で順位をつけてみます。
どの作品も甲乙付けがたいですが、個人的な好みとして1位ノモレ、2位ガリンペイロ、3位ヤノマミと認定しました。
何度もお伝えしていますが、国分拓さんがアマゾンの奥地を追ったノンフィクションは、全て傑作です。
ノンフィクション本でなんか面白い本ない?と思ったら、3作とも間違いなくオススメの作品なのでぜひ読んでみてください!
国分拓の面白い本「ガリンペイロ」あらすじと読書感想文
国分拓さんの本「ガリンペイロ」の読書感想文を書いていきます。
まず、ガリンペイロという聞き慣れない言葉や世界観を知らなければ感想も入ってこないかと思うので、「ガリンペイロの掟」を紹介します。
ガリンペイロの世界には絶対に守らなければならない掟があります。
この掟さえ守ればあとは全て自由なのですが、逆にもしこの掟を破ってしまったら、やはりそれなりの未来が待っているようです。
- ここは誰でも受け入れる
- ガリンペイロとなった者は本名を名乗る必要がない
- ガリンペイロとなった者は黄金さえ掘っていれば何をするのも自由である
- ガリンペイロとなった者は前科の有る無しを問われず犯罪歴も問われない。IDも不要である
- ガリンペイロとなった者は凶器を持つのも自由である
- 黄金の取り分は金鉱山の所有者が70%、ガリンペイロは30%である
- 金鉱山の所有者はコメと豆を支給するが、それ以外はガリンペイロが自分で得ねばならない。住む小屋は自分で建てなければならない
- この場所を誰にも明かしてはならない
- この場所を去っても明かしてはならない
- この場所を明かした者は死を確保すべきである
- 他人の黄金を盗んだガリンペイロは死を覚悟すべきである
ガリンペイロの掟から読み取れるように、ガリンペイロは来るものを全く拒みません。
過去の経歴や犯罪歴など全て関係なく、黄金を掘りたい者を受け入れます。
黄金が眠る金鉱山には所有者がいて、1グラム4000円の金が見つかったときには70%を所有者に、30%がガリンペイロに入ります。実際に数千万円の金が出たこともあれば、ほとんど出ないこともあって、月に数万円から10数万円といった収入の場合が多いそうです。
掟の最後のほうには、この金鉱山の危うさが見えてきます。
実際にこの本でもアマゾンの奥地にあることは書かれていますが、全ての地名は仮名表記されていて、どこにあるかは書き記してありません。
そういう危うい世界観で話が展開していくのですが、国分拓さんを含めたNHK取材班がどうしてこんな世界を取材できたのか?と疑問を抱きますね。
「ガリンペイロ」の魅力は、この本の登場人物「ラップ小僧」を追った人間模様です。
ラップ小僧は生意気な新入りで、とにかくよく大口を叩いて喋る割には全然働かない典型的なダメな奴として金鉱山に入山します。
「自分は黄金の王になる」と意気揚々と入山するものの、その過酷な現場に全く付いていけず、チームを組んでも使えない邪魔者扱いをされて追い出されてしまいます。
ラップ小僧はあえなくすぐに金鉱山から逃げ出してしまうのですが、そこから思いがけない展開に話が進んでいくわけですね。
ラップ小僧の立ち回りは、この本のひとつの魅力と言っていいでしょう。
国分拓さんの書籍は、ノンフィクション本でありながら文章が実に情緒的でドラマっぽくあります。
そこに良し悪しがあるのかもしませんが、ガリンペイロを始めとした国分拓さんの魅力はなんといってもその文章の創造力にあるんですね。
日本とは全くかけ離れた世界観でありながら、彼らの思想や行動の源が想像できるのは、その丹念な取材力に加えて文章の創造力があるからこその作品。
こんな世界が、この地球に存在すること。
そこで暮らす人々が、なにを考え、なにを背景に存在しているのか。
闇の金鉱山でひたすら一攫千金を目指す男たちの虚栄と噓、そして砂粒のような真実を追った傑作ドキュメント本です。ぜひ読んでみてください!
アマゾン奥地の秘境を描いたノンフィクション
ガリンペイロはaudibleオーディブルで無料で聴ける?
僕が2022年上半期に読んだ本をランキング形式で紹介した記事で第2位に選んだ『ガリンペイロ』ですが、残念ながら現在はaudibleの対象本ではありません。
オーディブル(audible)は、Amazonが提供している聴く読書サービスで、入会最初の1ヶ月間は無料体験を実施しています。
つまり、1ヶ月間は聴き放題対象作品の本が全て無料で聴けるサービスなので、めちゃくちゃお得です。
今回紹介したガリンペイロは入っていませんが、同じく2022年上半期のベスト本で紹介した『13歳からの地政学』や「詰むや詰まざるや」は無料で聴けるし、傑作ノンフィクション『サピエンス全史』や、お金の悩みのヒントをもらえる『ジェイソン流お金の増やし方』など、話題の本が全て無料で聴けます。
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『audibleオーディブル』の話題が出たので紹介すると、audibleは聴き放題と言ってもたいした本がないんでしょ?と考える方もいらっしゃるかと思いますが、これがビックリするほど読み応えのある本が揃っています。
このブログでは、audible(オーディブル)について詳しく書いた記事があるので、興味のある方は読んでみてください!
面白い本の読書感想文
これまでの読書感想文一覧
この記事のように、本を読んでは読書感想文をブログでアップしています。
これまでの『読書感想文一覧』があるので、興味のある本があればぜひ読んで見てください!
1)角幡唯介|エベレストには登らない
2)菅俊一・高橋秀明|行動経済学まんが ヘンテコノミクス
3)中田敦彦|中田式ウルトラ・メンタル教本
4)戸田和幸|解説者の流儀
5)石川直樹|この星の光の地図を写す
6)岸見一郎|哲学人生問答
7)渡邊雄太|「好き」を力にする
8)高橋源一郎|ぼくらの文章教室
9)石川直樹|まれびと
10)堀江貴文|英語の多動力
11)森博嗣|作家の収支
12)鈴木敏夫|南の国のカンヤダ
13)森博嗣|森助教授VS理系大学生 臨機応答・変問自在
14)米沢敬|信じてみたい 幸せを招く世界のしるし
15)馳星周|馳星周の喰人魂
16)藤代冥砂|愛をこめて
17)佐藤優|人生のサバイバル力
18)せきしろ|1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった
19)服部文祥|息子と狩猟に
20)ブレイディみかこ|ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
21)河野啓|デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場
22)幡野広志|他人の悩みはひとごと、自分の悩みはおおごと。
23)内山崇|宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶
24)近藤雄生|まだ見ぬあの地へ 旅すること、書くこと、生きること
25)岸田奈美|家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった
26)玉樹真一郎|「ついやってしまう」体験のつくりかた
27)村本大輔|おれは無関心なあなたを傷つけたい
28)小松由佳|人間の土地へ
29)服部文祥|サバイバル家族
30)石川直樹|地上に星座をつくる
31)加藤亜由子|お一人さま逃亡温泉
32)沢木耕太郎|深夜特急
33)ブレイディみかこぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2
34)沢木耕太郎|深夜特急第1巻・第2巻
35)沢木耕太郎|深夜特急第3巻・第4巻
36)いとうせいこう|国境なき医師団を見に行く
37)ちきりん|「自分メディア」はこう作る!
38)村上春樹|村上T 僕の愛したTシャツたち
39)鈴木賢志|スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む
40)沢木耕太郎|深夜特急第5巻・第6巻
41)落合陽一|0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書|
42)早坂大輔|ぼくにはこれしかなかった。BOOKBERD店主の開業物語|
43)小永吉陽子|女子バスケットボール東京2020への旅
44)辻山良雄・nakaban|ことばの生まれる景色
45)岡田悠|0メートルの旅
46)トム・ホーバス|チャレンジング・トム
47)長谷川晶一|詰むや、詰まざるや 森・西武VS野村・ヤクルトの2年間
48)田中孝幸|13歳からの地政学
49)国分拓|ガリンペイロ←今回の記事
50))サトシン・西村敏雄|わたしはあかねこ
51))林木林・庄野ナホコ|二番目の悪者