旅のエッセイ本『地上に星座をつくる/石川直樹』読書感想文

この記事は、新潮社から出版された石川直樹さんの著書「地上に星座をつくる」について書いている記事です。世界を旅する写真家が、世界のあらゆる場所での印象に残ったエピソードを月に一度連載した文章をまとめた一冊です。

書評記事」をカテゴリーで分類していて、様々なジャンルの本を紹介しています。本が好きな方はぜひ読んでみてください。

【書評】「地上に星座をつくる|石川直樹」とは、どんな本?


地上に星座をつくる

本好きなSさん

「地上に星座をつくる」は、どんな本なの?
石川直樹さんって、どんな人なの?

石川直樹さんは、世界を旅する写真家で、僕が写真活動を行ううで、最も影響を受けた方でもあります。

あるときはヒマラヤの8000m登山から、あるときは宮古島の海から、あるときはバングラデシュの混沌とした町から、あるときはカナダの大自然からと、世界を駆け回りながら写真を撮る旅を続けている石川さんが、写真ではなく、文章で世界各地の旅を表現した作品が本書です。

写真家の文章は、写真家の特性である「物事を見る力」が備わっていることもあって、同じ風景でも、鮮明な解像度で心象をより深く感じることができるような表現をすることがたくさんあります。よく見ることで、よく考えるようになり、それを伝わりやすく表現できるんですね。

石川直樹さんは、最も優れた文章表現をする写真家の一人です。

ちなみに、写真家が書いた本のオススメを紹介した記事があるので、よかったら読んでみてください。

Twitterにも書きましたが、本書は純粋に旅をしたいなあと思える一冊です。

旅っていいなあ、いろんな場所に行ってみたいなあ、世界を見る経験を重ね続けていきたいなあ、と思えるような本です。
旅に出たくてウズウズしている人にとっては、更にウズウズが増すかもしれません(笑)


【書評】「地上に星座をつくる」著者の石川直樹さんとは?【写真家】

石川直樹さんとは?

写真家。人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表し続けている。北極、南極、ヒマラヤ8000mといった極地、ニュージーランドの原生林、ポリネシア地域に浮かぶ島々、大分県の国東半島など、フィールドは様々。写真は土門拳賞、文章は開高健ノンフィクション賞を受賞している。

石川直樹さんの本や写真集は、これまで書評記事でも何度か紹介しています。

石川さんの著書はたくさんありますが、個人的にオススメの石川直樹さんの写真集や本を3つ紹介するならば、この3つです。

また、これまで読んだ本の中から面白い本を紹介した記事でも、何度も登場しています。

写真家として写真が美しいのは当然ですが、文章も秀逸で開高健ノンフィクション賞を受賞しているし、講演もボツボツ淡々と話す内容が刺激的で面白いし、写真のワークショップもとても充実しています。僕は、写真のセレクトの考え方を石川さんを通して学びました。

石川直樹さんはメディアにも多数出演しているので、本を読むのはちょっとなあという方は動画を見てみてください。

【書評】「地上に星座をつくる|石川直樹」を読んだ感想

石川さんの旅はヒマラヤの8000m峰の登山という誰もが経験できるようなものではない旅から、宮古島で過ごすゆったりとした日々や、能登半島での温泉があったり、かと思ったらアラスカのユーコン川を川下りしたりといった、振り幅が非常に大きく感じるようなものです。

ほんとに、いろんな場所を旅しています。

ただ、場所の違いはあれど、石川直樹さんは本書の中でそれらの旅を、全て同じようなテンションで、淡々と、その地にある「驚き」を表現しています。

これは、彼の写真にも共通しているもので、僕たちが触れられるような場所から触れにくい場所まで、全てを地続きとして捉え、「作品」として昇華し、僕らに驚きを与えてくれる作品なんですね。世界をフラットにとらえ、田舎でも都市でも平地でも極地でも、同じように表現しているところが、彼の作品の魅力です。

さて、今回出版された本書は、個人的にはなとても新鮮に感じる本でした。

僕は石川さんがまだ20代前半だった頃から、彼の作品を読んでいますが、40代に差し掛かる年齢となった今になって、なんだか少し心境が変わってきたのかなと思えるような内容が多くあったからです。

20代前半はPole to Poleという北極から南極までの旅や、ミクロネシアでの伝統航海術の旅、世界中の洞窟壁画を撮影した旅などを文章にしていて、それらはとても刺激的で、彼自身もその旅を心から楽しみ、前に前にと進んでんでいくことだけを感じるような文章でした。

それが、「地上に星座をつくる」では、過去を振り返ることも度々あったし、学生などの若い世代を輝かせるような活動にも比重を置いていた。
この本自体が、7年間とけっこう長い期間の文章をまとめた本でしたが、なんだか20代前半の頃とは確実に心境に変化があるように感じられら一冊でした。

この本にはこんな描写がありました。

18歳の自分と23歳の自分に奇しくも鹿児島と言う地で立て続けに出会った。あれから失敗もたくさんしたし、後悔する事はいくつもあるが、20年前の自分が踏み出した1歩だけは間違っていなかったと思う。
まだ昔を振り返るには早いが、これまでのわずかな歩みを思い返してみると、あれからずっと途切れることなく旅に身を委ねていたのだな、と思う。
そして、今年も来年もきっとこの時も変わらずに僕は旅に惹かれ、自分の身体で世界を知ろうともがき続けていくのだろう。それが、それこそが、自分の生き方なのだから。

石川直樹さんの、これからの活動がまた楽しみになりました。

【書評】「地上に星座をつくる|石川直樹」に記された名言・名文を紹介

僕は本を読んだら気になった文章をノートに書き記す習慣を、もう15年近く続けています。

インプットの吸収率が圧倒的に上がるし、なにより目に見える形で記録されていくことが自分の自信になる。
そんなサイクルが好きで、コツコツと本から気になったことばを集めています。

本書から気になった文章を紹介します。

記憶に残っていない、新しい何かとの遭遇を繰り返して人は大人になっていく。
歳をとればとるほど、新しい何かが少しずつ減っていき、知っているつもりなことが多くなる。
彼ら彼女らの会話や反応を間近で見ていると、自分が未知の世界と出会った瞬間の新鮮な感覚がわさわさと思い起こされた。

いずれ忘れてしまうそんな刹那の輝きを目の当たりにできていることが、僕は嬉しかった。
中高生の成長や変化の現場に立ち会っていることに、喜びもするし緊張もする。
だからこそ、みんなが投げかけてくれる一瞬一瞬の光の粒をどうにかして写真で受け止めようと、本番を迎えるその日まで必死に追いかけた。

【書評】『「地上に星座をつくる」|石川直樹』の書評まとめ

旅が好きな方、石川直樹さんに興味のある方はぜひ読んでほしい本です。
普段あまり本を読まない人にとっても、読みやすい文章ですね。

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新潮社
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「地上に星座をつくる」の評価
面白さ
(4.0)
吸収できた言葉
(4.0)
デザインの美しさ
(4.5)
総合評価
(4.0)

せっかく読んだ本をインプットしておくだけでなく、アウトプットすることで、その本からなにを得て、なにを感じたかをまとめています。

書評記事一覧
1)角幡唯介|エベレストには登らない
2)菅俊一・高橋秀明|行動経済学まんが ヘンテコノミクス
3)中田敦彦|中田式ウルトラ・メンタル教本
4)戸田和幸|解説者の流儀
5)石川直樹|この星の光の地図を写す
6)岸見一郎|哲学人生問答
7)渡邊雄太|「好き」を力にする
8)高橋源一郎|ぼくらの文章教室
9)石川直樹|まれびと
10)堀江貴文|英語の多動力
11)森博嗣|作家の収支
12)鈴木敏夫|南の国のカンヤダ
13)森博嗣|森助教授VS理系大学生 臨機応答・変問自在
14)米沢敬|信じてみたい 幸せを招く世界のしるし
15)馳星周|馳星周の喰人魂
16)藤代冥砂|愛をこめて
17)佐藤優|人生のサバイバル力
18)せきしろ|1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった
19)服部文祥|息子と狩猟に
20)ブレイディみかこ|ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
21)河野啓|デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場
22)幡野広志|他人の悩みはひとごと、自分の悩みはおおごと。
23)内山崇|宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶
24)近藤雄生|まだ見ぬあの地へ 旅すること、書くこと、生きること
25)岸田奈美|家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった
26)玉樹真一郎|「ついやってしまう」体験のつくりかた
27)村本大輔|おれは無関心なあなたを傷つけたい
28)小松由佳|人間の土地へ
29)服部文祥|サバイバル家族
30)地上に星座をつくる←今回の記事
31)加藤亜由子|お一人さま逃亡温泉
32)沢木耕太郎|深夜特急
33)ブレイディみかこ|ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2
34)沢木耕太郎|深夜特急第1巻・第2巻
35)沢木耕太郎|深夜特急第3巻・第4巻
36)いとうせいこう|『国境なき医師団を見に行く
37)ちきりん|「自分メディア」はこう作る!
38)村上春樹|村上T 僕の愛したTシャツたち
39)鈴木賢志|スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む
40)沢木耕太郎|深夜特急第5巻・第6巻
41)落合陽一|0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書|
42)早坂大輔|ぼくにはこれしかなかった。BOOKBERD店主の開業物語|
43)小永吉陽子|女子バスケットボール東京2020への旅
44)辻山良雄・nakaban|ことばの生まれる景色
45)岡田悠|0メートルの旅
46)トム・ホーバス|チャレンジング・トム
47)長谷川晶一|詰むや、詰まざるや 森・西武VS野村・ヤクルトの2年間
48)田中孝幸|13歳からの地政学
49))国分拓|ガリンペイロ
50))サトシン・西村敏雄|わたしはあかねこ
51))林木林・庄野ナホコ|二番目の悪者

興味のある本があれば、書評を読んでみてください。

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