【書評】服部文祥|「息子と狩猟に 」を読んで考えた【サバイバル登山家の初小説】

この記事は、新潮社から出版された服部文祥さんの著書「息子と狩猟に」について書いている記事です。
サバイバル登山家にとって初めてとなる小説作品です。

 

【書評】服部文祥|「息子と狩猟に 」の書評記事

サバイバル登山家・服部文祥さん著書「息子と狩猟に (新潮文庫)」についての書評記事です。

Twitterにも書いている通り、狩猟と登山をテーマにした短編小説で、それぞれの世界が住むタブーとモラルの境界線について考えさせられる一冊です。


書評記事一覧
1)角幡唯介|エベレストには登らない
2)菅俊一・高橋秀明|行動経済学まんが ヘンテコノミクス
3)中田敦彦|中田式ウルトラ・メンタル教本
4)戸田和幸|解説者の流儀
5)石川直樹|この星の光の地図を写す
6)岸見一郎|哲学人生問答
7)渡邊雄太|「好き」を力にする
8)高橋源一郎|ぼくらの文章教室
9)石川直樹|まれびと
10)堀江貴文|英語の多動力
11)森博嗣|作家の収支
12)鈴木敏夫|南の国のカンヤダ
13)森博嗣|森助教授VS理系大学生 臨機応答・変問自在
14)米沢敬|信じてみたい 幸せを招く世界のしるし
15)馳星周|馳星周の喰人魂
16)藤代冥砂|愛をこめて
17)佐藤優|人生のサバイバル力
18)せきしろ|1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった
19)服部文祥|息子と狩猟に←今回の記事
20)ブレイディみかこ|ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
21)河野啓|デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場
22)幡野広志|他人の悩みはひとごと、自分の悩みはおおごと。
23)内山崇|宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶
24)近藤雄生|まだ見ぬあの地へ 旅すること、書くこと、生きること
25)岸田奈美|家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった
26)玉樹真一郎|「ついやってしまう」体験のつくりかた
27)村本大輔|おれは無関心なあなたを傷つけたい
28)小松由佳|人間の土地へ
29)服部文祥|サバイバル家族←同じ作者
30)地上に星座をつくる|石川直樹
31)加藤亜由子|お一人さま逃亡温泉
32)沢木耕太郎|深夜特急
33)ブレイディみかこ|ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2

【書評】「サバイバル登山家・服部文祥|息子と狩猟に」とは?

息子と狩猟に|服部文祥


息子と狩猟に (新潮文庫)

服部文祥とは?
サバイバル登山家の異名をもつ異彩な登山家。「山に対してフェアでありたい」という考えから、食料を現地調達し、装備を極力廃した「サバイバル登山」のスタイルで活動をしている。情熱大陸での有名な滑落シーンや、amazon primeのカリギュラで東野幸治さんと狩猟を共にした姿などメディアにも多数出演している。著書の「ツンドラ・サバイバル」が最高におもしろい。

サバイバル登山家の服部文祥さんの初の小説作品。内容も服部さんらしく、根源的な問いを与えてくれるものだった。

この小説には2編の短編が描かれている。一つは「狩猟」、もうひとつは「高所登山」がテーマである。
どちらも服部さんのこれまで培ってきた経験が活かされたテーマではあるが、もちろん「サバイバル登山家」なんて名乗る人の書く小説が、そんな単純な作品なはずがない。

私たちが暮らす人間界と、山がそこにある自然界。
人間界にあるタブーやモラルは、自然界ではタブーやモラルとして存在するのか?

それぞれの世界でのタブーとモラルの境界線を考えさせられる、一癖も二癖もある作品。
ぜひ読んでほしい。

 

服部文祥さんの本は、これまでたくさん紹介しています。参考にどうぞ。

 

【書評】服部文祥|「息子と狩猟に」の名言を紹介する

僕は本を読んだら気になった文章をノートに書き記す習慣を、もう15年近く続けている。

【15年間実施してきた完全版】語彙力を伸ばす読書術

インプットの吸収率が圧倒的に上がるし、なにより目に見える形で記録されていくことが自分の自信になる。

本書から気になった文章を紹介する。

 

秘密は自分の口からバレる。しゃべらなければ絶対にわからない

その通り。
誰にも知られたくない話があるのなら、自分の口からは絶対に話さないことだ。

 

人殺しは一番重い罪だ。すくなくとも世の中ではそうなっている

 

至極当たり前であるが、「すくなくとも」という箇所がこの本の奥深さを物語っているのは間違いない。

 

 

服部文祥|「息子と狩猟に」を読んだ感想

この本には二つの短編が記されている。
内容についての詳しい話は書かないが、どちらの作品も人間界の「タブーやモラル」について描かれている。

片方は狩猟の世界、もう片方は高所登山の世界
どちらも自然界に足を踏み込んだ世界ではあるが、それぞれが人間界の作ったタブーやモラルが形成された異様な世界だ。

鉄砲を使う狩猟には厳しいルールがあり、その人間界のルールを守らなければ罰せられる。
生きるか死ぬかの瀬戸際にある高所登山にも、やってはいけないモラルがある。

 

だが、それをちょっと俯瞰して見た自然界における「狩猟」や「高所」ではどうだろう?

夜中に鹿を撃つこと(捉えること)はいけないことなのか?
サバンナでライオンがインパラを捉えて食べることはいけないことなのか?
仲間を見捨てて自分だけが生きようとすることはいけないことなのか?
チーターに狙いを定められたシマウマを見捨てて自分だけが逃げることはいけないことなのか?

「狩猟できる山」や「8000mの高所」を舞台にした人間界と自然界の境界線にある世界のルールについて考えさせられる一冊。
超絶おすすめ。

この本の評価
面白さ
(4.5)
吸収できた言葉
(4.0)
デザインの美しさ
(4.0)
総合評価
(4.5)

服部文祥さんの他のオススメ作品「ツンドラ・サバイバル」

ちなみに服部文祥さんのツンドラ・サバイバルはこのブログの一番人気の記事「心からオススメできる面白い「旅の本・紀行文20冊」でも紹介している本で、こちらの作品も強くオススメする。

ツンドラ・サバイバル/服部 文祥


ツンドラ・サバイバル

サバイバル登山家、服部文祥のベスト本
服部さんが、下記の引用文章を書いた。これが感動的で、震えた。

言葉は通じなくても、私にとってミーシャは気心が通じ合う猟仲間であり、ミーシャの存在は私の理想だった。理想の人間に出会い、理解し合えたことは、これまでの自分の生き方が間違いでなかったと確認することでもあった。
狩猟の経験がなければ私は性格にミーシャを理解できたとは思えないし、正しく評価できたとも思えない。
さらにミーシャはミーシャのような狩人が世界中にいるという証拠でもあった。それはそのまま過去にも未来にも、私にとって信用できる狩猟仲間、山仲間が存在するという証拠だとも考えることができるはずだ。

彼は横浜の自宅で動物を捌いたり鶏を飼ったりして暮らしている。
恐らく奇異の目で見られることも今まで多くあっただろうが、彼が毎日を積み重ねて実践してたことを、ツンドラの大地で当たり前のように実践している人に出会った瞬間。

この喜びは、きっと僕にはわかりえない感情だろう。

自分が積み重ねてきことが間違いではなかったし、自分が積み重ねてきたからこそ彼の行動を理解できたし、自分が積み重ねてきたように今も昔も狩猟している人がいるという安心感。

そんな途方も無い感覚を想像させてくれる一冊。

至極当たり前であるが、「すくなくとも」という箇所がこの本の奥深さを物語っているのは間違いない。

 

「ツンドラサバイバル」は、オススメの旅本・紀行文を紹介した記事でも挙げたので、興味のある方は読んでみてください。

心からオススメできる面白い「旅の本・紀行文22冊」

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